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色を纏う

 私は女性なので、毎日ある程度のメイクをする。

 日焼け止めを塗って、ファンデーションを塗って、アイシャドウを選んで、全集中でw アイライナーを引く。最後にマスカラ。束にならないように、瞼に付かないように。
 それで『私』が完成する。

 髪もそうだし、土台となる肌のテコ入れも怠れない(って、自分なりに……だけど)

 ふと昨日、全てそれが虚しくなった。
 
 こんな飾ったところで、誰も私の心の奥までなんか、見えやしないんだよな。

 当たり前のことだ。

 こんないい年齢になって、そんなこと言ってちゃ……甘ったれんな、自分。

 それは分かってて ── だけど誰かに、彼の人に、この『完成した私』の奥にあるものこそを、どうか見てほしい。

 でなければ、いくら綺麗に、美しく飾ったところで、こんなもの……

 それが昨日の憂鬱。
 

 心を開くのはとても下手だ。

 友達が3人で集まると、必ず2と1の1の方になってしまうし、ラインは相手が最後の送信になると何だか申し訳なくて、意味なくスタンプを送ってしまうし。
 電話は先に切れない(接客業の長い人は習い性なのかなぁ)
 注目されるのは落ち着かないし、存在感と気配は消してるくらいでちょうどいい。
 持ち上げられると逃げたくなる。
 なかなか警戒心を切ることができない。
 家族とかそんな属性はどーでもよく、誰かといることが単純に疲れる。

 どうしようもない。

 だからさ、そういうのって……
 『縁のなさ』
 なんだろうなって。

 そう思って俯いていた、いつかの私に。
 魔法をかけてくれたのは(いや、勝手に私のなかの魔法が発動したのかもしれないけど)


         🖤🖤🖤
 
 
 世界は『寂しい人たち』で溢れていて。
 みんなが心の隙間を埋める誰かを探していて、頼れる誰かを探している。

 ほら、例えば今、流行りの『魂の片割れ』とか『ツインレイ』だのいうやつ。
 他人だけど他人じゃない他人?

 そんなようなもんをみんな探してる。
 
 
 あの人を知って、確かに私は変わったのだ。
 だって、そもそも『心の奥』を見てほしいなんて、いつかの私は思いすらしなかったんだ。

 心の奥なんて、誰かも自分も知らなくていい。
 眠ったままでもいい。
 表面だけで、平和に暮らせればいい。

 平和ならば、それで。
 
 
 ……それで、いいのか?
 
 
          🖤🖤🖤
 
 
 いつかの私。
 世界は明らかに傾き始めて、バランスを失いつつある。

 あの人のことも、ほら、またカテゴライズしようとしてる。
 関係性にラベルを貼って、分類して安心しようとしてる。

 どこに分類するかなんて知らなくたっていい。

 ただここに魔法の掛かった私がいる。
 それだけで、充分に特別で不思議な繋がりの。
 その、証なのだから。

 掛かった魔法の力で、この『生まれてきた意味』を知り、この世界に何かができるならば。
 この不思議な繋がりにも意味があるのだろう。
 
 
 人生は川の岸から、その対岸へ泳ぐのによく似ている。
 みんな何かを背負って川を渡る。

 向こう岸に待つ者を、私は知らない。

 あの人ならいいのにな。
 なんて、誰もいないかもしれないのに。
 
 ひらひらと泳ぐ私を見てほしくて。
 そのためだけに、今日も肌に色を纏う。
 
 
 
 どうぞ善き夜がありますように♡
 
 

 
 
 
 
 
 

 

 

 

 
 

 

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