〔91〕白頭狸の時務随想ーわが自衛隊は法制上も精神上も軍隊ではない
〔91〕白頭狸の時務随想―自衛隊は法制上も精神上も軍隊ではない
本文を読み始める前にこれを観てください。今朝のニュースです。
ロシアのプーチン大統領が、「民間軍事会社ワグネルの反乱収束から5日後の6月29日、同社創設者のエフゲニー・プリゴジン氏らと会合を開いていた」とペスコフ大統領報道官が7月10日、報道陣に明らかにした。
プーチン氏がモスクワの大統領府に「招待した」としており、プリゴジン氏やワグネルの処遇を協議したとみられる。
ペスコフ氏によると、会合にはプリゴジン氏のほかワグネルの司令官ら35人が参加し、約3時間話し合った。プーチン氏は、ウクライナ侵攻へのワグネルの貢献や反乱について評価を述べた。司令官らの話を聞き、今後の任務についての選択肢を提案したという。
プーチンとプリコジンの間柄が伝わってきますね。これでハッキリしたように、プリコジンのモスクワ進軍は紛れもない「兵諫」だったのです。
主君に政策ないし戦略の変更を求めて強く諫言するとき、文臣は諫言を奏上しますが、武臣は具体的に兵を動かします。
これに対し「反乱」は軍事力を以て政権を奪取することを目的とし、成功すれば「革命」ないし「クーデタ」をもたらしますが、「兵諫」は「反乱」とは目的が異なり、政策・戦略に関する諫言が受け入れられたら、首謀者は矛を収めて収束します。
今回のプリコジンの行動は明らかに「兵諫」であると白頭狸は〔89〕で断定いたしましたが、それを「反乱」とか「クーデタ」とか唱えておるのが、テレビあるいはユーチューブで論陣を張る評論家の全員です。
国際問題評論家を称するマスコミ芸者連はともかく、元自衛隊の最高幹部や防衛関連研究所の現研究職までが、口を揃えて「反乱」呼ばわりするのに白頭狸は呆れました。
やはり現憲法における自衛隊は、法制上は謂うに及ばず、実質上も軍隊ではありません。軍の要件たる軍事知識、政治知識を欠いているからですが、その基底には国防精神の欠如があると思われます。
さて話は変わりますが、最近石油精製大手のエネオスが、和歌山県有田市初島地区に存在する製油所を撤収することを決定しました。
有田市初島から海草郡下津町にかけては日本有数の良港で、WWⅡ当時から軍港として重視されていましたが、北方に隣接する和歌山港と併せて「和歌山下津港」と呼ばれ、港湾法上の「国際拠点港湾」で「特定港」に指定されております。
「今から海上自衛隊の基地としての軍港を造設すべし」というのが白頭狸の主張です。この主張は当然ながら海上自衛隊の要請がなくては成り立ちません。
ところが人里離れた狸庵にはそのような声は届いてきません。耳が遠くなったこともありますが、海上自衛隊がその声を挙げていないようです。
わが国の国防計画を考えた場合、新軍港の建設を除外するほどバカなことはあるまいと思う狸は、軍港の新設に関して海自の若手に聞いてみた処、「地元で要請してくれれば、われわれも動きますが」とのことです。
これを聞いた白頭狸には、これ以上言うことはないので、これから地元の意向をまとめるための工夫をしたいと思います。