大江健三郎 親密な手紙
ふと書店に行って手に取ったら買って読んでしまった1日で。新書だからというのもあるが。その前に本屋に来た時にこの人の水死というのをパラパラと立ち読みすらと、伊丹十三の事が書いてある物語で、彼の自殺の事はずっと気になっていたから、最初の章が伊丹十三の事から始まる文章で、なぜか惹かれた。この人の本には必ず渡辺一夫と外国の作家の英語の文章が出てきて苦労するのだが、なぜか読めるときは読める!
大江の文章のなかで、息子の光さんと、母親のエピソードがいつも好き。特に母親の何何ですが!という方言の言い方に何故か惹かれるこの人物の凄さがある。安部公房や大岡昇平との話しも面白いが、やはり家族との対話と自分の精神的危機、そしてあの東日本大震災時の日誌的な出来事、とくに原発事故においての文章は リアルで、同時代を生きたものとして一つの証言価値があると思う。違う土地で違う人間が色んな事を考え行動する、それを思い出す、懐かしむだけでなく 反芻する手助けとして、こういう文章を書ける人が作家としてどの時代にも必要だろうと。この文章は雑誌図書にエッセーとし発表されたものをまとめただけに作品というよりは大江健三郎のメモのような気軽なスケッチの感があり、余計に肩の力が抜けた人となりがわかりやすいかも。