図書館本44冊目『その猫の名前は長い』イ・ジュヘ
帯の言葉の
”見過ごしてきたけど知っていた、中年女性の「ある感情」を掬い取る短編集”
”中年女性の「ある感情」を掬い取る”と言うのが響いてきて借りました。
9作品それぞれに、様々な状況下(女性ゆえの抑圧下など)にある中年女性達が登場します。
父親の四十九日法要後に、川べりで缶ビール片手に語り合う三姉妹
紛争地域に派遣される医療チームで活動する女性医師
職場の後輩女性のDV被害に心を痛める、シナリオ作家男性の妻
コロナ禍、十年来の友情にヒビが入る3人のママ友たち
子宮と筋腫の摘出手術中に色々回想している女性社員
90年代の学生運動をモチーフにして、友人が製作した映画の主人公モデルとなっていることに戸惑いを感じる、デモ体験者の女性
何かの事件の当事者であるらしい少年と町に暮らし続ける祖母、その家にスプレー壁画を施したボランティア女性
主人公の女子大学生「わたし」と恋人の女性を祝福する、恋人の3人の母親たち(この話『春のワルツ』は一番印象深く、好きです。)
娘の大学入学祝いに北海道旅行をする、母「わたし」と娘、と母「わたし」の友人女性
読んでいて、状況を想像しにくいところもありましたが、「訳者あとがき」や、「解説」が理解の助けになりました。
分筆家の大阿久 佳乃(おおあく よしの)さんによる「解説」は、著者のイ・ジュヘさんが、米国の女性詩人、アドリエンヌ・リッチやエリザベス・ビショップの影響を受けていることで、この二人の詩人について触れられており、とても興味深く、読み応えがあります。
「この小説はケアする者たちの葛藤を映し出す。ケアする者としてつながりまたケアする者どうしであるがゆえにお互いの阻害に陥ることもある女たちを描く。」
「この小説集を読んだときにもっとも歯がゆかったのは、女たちの友情が――(省略)――彼女たちの個々の関係性以外のものによって左右されるということだった。」(「解説」より)
「解説」を読んで、この本を読んで私が感じたことはこういうことだったのか、と気付きました。
日本でリッチやビショップの作品を読むことは現在難しいということで、私自身詩人にも疎く、二人の名前も知らないはずなんですが、「解説」に出てくる「ケアする者」「制度化された母性」「わたしたち」「フェミニズム」…などの言葉を見ていると、なーんか、初めて見る気がしないなぁ、という気になってきました。
そして、参考文献のひとつに『アドリエンヌ・リッチ女性論 血、パン、詩 』とあるのを見て、ひょっとして、ブレイディみかこさんの小説かエッセーで読んだことがあったのではないか、との思いに至りました。
(noteに記録する以前…?いや、あれか?…ちゃんと調べろよ~ん)
不確かな記憶ですが、やはり興味深い内容だったと思います。
(読んだら忘れる私の記憶に残っているくらいなので…)
小説の感想文というより、「解説」紹介文になってますね。
「解説」を踏まえて、ゆっくり再読したいです。