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一月十日のシェヘラザード

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【創作百物語】 一月十日のシェヘラザード 第五夜目『イリムコ』

【創作百物語】 一月十日のシェヘラザード 第五夜目『イリムコ』

『イリムコ』 (件を喚ぶまで残り九十五夜) 

珍しい昆虫がいるという報告を受け私は小さな村に来た。
大学での研究発表を間近に控え、文献での調査に限界と煩わしさを感じていた自分にとって、それは吉報だった。
村は最寄りの駅から歩いて30分ほどのところにあった。
駅に到着する途中、二両しかない電車の中から小さな桟橋を渡る時に一瞬見えたが、木造建築の小さな家がわずかに並ぶだけの小さな村だった。
私は村に

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【創作百物語】 一月十日のシェヘラザード 第四夜目『ホワイトアウト』

【創作百物語】 一月十日のシェヘラザード 第四夜目『ホワイトアウト』

『ホワイトアウト』 (件を喚ぶまで残り九十六夜) 

私の街ではすぐにホワイトアウトになる。
ホワイトアウトというのは、雪が風によって舞い上がり、視界が一面、真っ白になることだ。
私の街では降雪量は多くないものの、田園が広がる平地は風を遮るものを持たず、吹きさらしの風が雪を高く舞い上げた。日によってあまりにホワイトアウトがひどい時は、三メートル先の障害物ですら見極めるのが困難になる。そのため、私の

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【創作百物語】 一月十日のシェヘラザード 第三夜目『炎猿』

【創作百物語】 一月十日のシェヘラザード 第三夜目『炎猿』

『炎猿』 (件を喚ぶまで残り九十七夜) 

 手記

「赤く燃え上がる猿がいる」

 その何かを最初に発見したのは、市内に住む小学生グループだったそうだ。その小学生グループは5名の人物を中心としており、多少の増減があるものの、発見時は4名であったという。
 そのグループ内でも中心人物となる少年を、仮にKくん(8)とする。このKくんたち4名は、その日も近くのN公園でそれぞれ持ち寄った携帯ゲーム機で通

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【創作百物語】 一月十日のシェヘラザード 第二夜目『棺桶』

【創作百物語】 一月十日のシェヘラザード 第二夜目『棺桶』



『棺桶』 (件を喚ぶまで残り九十八夜) 

「……目が覚めたか。横を見るな、首がもげるぞ。

 お前は、事態を飲みこめずにいるだろう……体はろくに動かず、視界は暗く閉ざされたまま、体が揺れる感覚と、俺の声だけが聞こえている………反応がないところを見ると、口も開けないんじゃあないか…なぁ、………だが安心してくれ、それは正常だ。お前の体は今………箱の中にある。ああ、安心しろ、あと少しで出してやれる

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【創作百物語】 一月十日のシェヘラザード 第一夜目『カエル柵』

【創作百物語】 一月十日のシェヘラザード 第一夜目『カエル柵』

※1月10日から、開始しています。以前に掲載されていた話と変えておりますのでよろしくお願いいたします。

冬の息吹を受けながら、僕とシェヘラザードは件を喚ぶ。
『件を喚ぶために、私が一夜ずつ怪談を話すわ。あなたは、それを千春に伝えればい』
「…僕が?」
『千春に私の声は聞こえないもの。あなたが毎晩語るのよ』
「そうしたら…」
『件が来る』
シェヘラザードは傘の中からこちらに視線を送る。
『さぁ、一

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