7歳__心因性頻尿/小説【その患者は、「幸せ」を知らないようだった。】
「何度言ったらわかるの!!」
母親の希代は、台所のステンレス台を叩いて怒鳴った。
「ごめん…」咲希はピアノの前で涙を堪えていた。
次のコンクールの課題曲を練習しているのだが、テンポが速くてつい指が走ってしまう。
左手の甲を血が出るまでつねると、涙が堪えられることを咲希は7歳にして知っていた。
「そこは三連符でしょうが!わかってるの!?」
希代は半ヒステリック状態だった。
咲希がピアノの練習を始めてから、とうに3時間が経過していた。
「うん…ごめん、ちょっとトイレ行ってく