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いちばんなんていらないよ

 はるのあるひ もりのひろばで ネズミのミリーと とかげのチョッピが おにごっこをしてあそんでいます

 ミリーにとってチョッピは もりのがっこうで いちばんはじめにできた おともだちです だからミリーは よくチョッピをあそびにさそうのです

 2ひきはいつも おにごっこをして あそびます

 いまは チョッピが おに ミリーをおいかけています

 ところが かぜのように 「ピュー」っと すごいはやさではしるチョッピは あっというまに ミリーをつかまえます

 なんどやっても チョッピは すぐにミリーをつかまえます なぜなら チョッピは がっこうでいちばんはしるのが はやいからです

「またつかまっちゃったよ チョッピは やっぱり はしるのがはやいなあ」

「ぼくは はしることに とってもじしんがあるんだ さあ もういっかいだけやらない?」

 チョッピは じしんまんまんに こたえます

「ううん きょうはもういいや またあしたあそぼうよ」

 ミリーはすこし げんきがないようすです

「ところでチョッピは なんでそんなに はしるのがはやいの?」

「ごはんをたくさん たべているんだ 1にち3かい いっぱいたべるんだよ おかわりだって するんだ」

 チョッピのからだは きんにくがモリモリです しかし チョッピのからだをみたミリーは「バッタばかりたべて からだがおおきく なるもんか」と からかいたく なりました

 するとチョッピは こういいます

「でもね ぼくはミリーとちがって べんきょうができないんだ こくごも さんすうも とっても にがて ミリーはいいよなあ うんどうも べんきょうもできるんだもの」

 たしかに ミリーは チョッピよりもべんきょうがとくいですが それはミリーにとって ちっともうれしくありません

 なぜなら ミリーはかけっこで 1ばんになれないからです

 「ぼくだって ごはんをたくさん たべているのに どうして1ばんに なれないんだろう」とミリーは ふしぎに おもうのでした

 そんなことをかんがえていると とつぜん つよいかぜが「ピュー」っとふきました そのかぜといっしょに チョッピもかぜのように はしっておうちにかえるのでした


 なつのあるひ ミリーはリスのロビーンと いっしょに べんきょうをしています

 ロビーンはミリーの ごきんじょさん だからよく いっしょにべんきょうを するのです

 ロビーンは がっこうで1ばん べんきょうがとくい こくごも さんすうも いつも100てんをとります

 ミリーもべんきょうはとくいですが ロビーンには かないません

 このまえ ロビーンがめずらしく テストで 98てんをとったとき みんな「すごい!」と ほめていたのに ロビーンはいっぴき とてもくやしそうでした

 そんなすがたをみた ミリーは なんだかかなしいきもちに なりました

「ロビーンはいつも100てんをとって すごいなあ どうしてそんなに べんきょうがとくいなの?」

 べんきょうにつかれたミリーは ロビーンに ききました

「あたし たくさんおべんきょうしてるの ママがね 本をたくさんかってくれるの それでおべんきょうをするからね いつも100てんがとれるの」

 ロビーンはじしんまんまんに こたえます

 ミリーは「ふーん」といって つくえにひじを つきました このときミリーは「そとであそぶほうが たのしいじゃん」と おもうのでした

 すると ロビーンは こういいます

「でもね あたしおべんきょういがいは にがてなの とくに うたなんかとってもにがて いつもみんなに わらわれるの ミリーはいいなあ うんどうも おべんきょうも うたも できるんだもの」

 ミリーは ロビーンよりも うたがじょうずです でもそれは ミリーにとって ちっともうれしくありません

 なぜなら ミリーは べんきょうで1ばんに なれないからです

「ねえ そろそろきゅうけいにしない? ママがおかしを やいてくれているわ」

 ロビーンはえんぴつをおいて ミリーに てまねきしました

「んー ぼくはもうすこし べんきょうしてからにするよ ロビーンは さきにたべててよ」

 ミリーは ひっしに えんぴつをうごかします

「そっか じゃあさきにしたで たべてるね」

 ロビーンは へやをでると かいだんをおりていきました ミリーは そのすがたをみながら すこしくやしいおもいを したのでした


あきのあるひ ミリーとハリネズミのフリルが うたのれんしゅうを しています

もうすぐがっこうで おんがくかいがあります だから2ひきは ピアノがあるフリルのおうちで れんしゅうをするのです

 フリルは がっこうで1ばんうたがじょうずです おんがくのじかん いつもせんせいに ほめられています ともだちもみんな フリルがうたうと おおきなはくしゅをします

 ミリーも うたはじょうずですが ともだちはフリルばかりほめるので ちいさなはくしゅしか もらえません

 そんなとき フリルはこっちをみて「えっへん」と いっているように みえるのでした

 ミリーは れんしゅうに すこしつかれたので フリルに こうききます

「ねえねえ フリルは どうしてそんなに うたが じょうずなの?」

「うちには ピアノがあるでしょ あのピアノで おかあさんが れんしゅうを てつだってくれるの まいにちれんしゅうするからね むずかしいうただって うたえるのよ」

 フリルは そういうと またおおきく くちをあけて うたいはじめました

 ミリーは フリルのうたう すがたをみて「なんだか おさかなみたい」と おもうのでした

 そんなことを かんがえていると フリルは こういいます

「でもね あたいは うたしかできないの うんどうも おべんきょうも とってもにがて ミリーは すごいよね うんどうも おべんきょうも うただって できるんだもの」

ミリーは フリルより うんどうも べんきょうも とくいです でもそれは ミリーにとって ちっともうれしくありません

 なぜなら ミリーは うたで1ばんに なれないからです

「はあつかれた ミリー そろそろれんしゅうは おわりにしよっか おそとで あそばない?」

 フリルは うたうのをやめると ミリーを あそびに さそいます

「ううん ぼくはもうすこし れんしゅうしてから いこうかな さきに もりのこうえんに いっててよ あとからそっちに いくね」

 ミリーがそういうと フリルは「そう じゃあさきに いってるね」といい おそとへ でかけていきました

 フリルの うしろすがたをみながら ミリーは「うたなんて きらいだ」とおもい もっていたがくふを ゆかに おとすのでした


ふゆのあるひ ミリーは ひとりで もりのこうえんを さんぽしていました きょうは ひどくおちこんでいるみたい ずっと したをむいています

 あるくのにつかれたので ベンチで ひとやすみしていると おとこのこが1ぴき こうえんへ やってきました

 よくみると おなじがっこうの モグラのロンタンでした ロンタンはいつも がっこうでひとりぼっちです やすみじかんは よく えをかいたり ほんをよんだりしています

いちど えをみせてもらったことが ありますが ロンタンの えは とてもじょうずとは いえませんでした そのときも「ねこをかいているの?」ときくと「ウサギだよ」と いわれるほどでした

 そんなロンタン きょうもこうえんにはいると ブランコにすわって えをかきはじめました

 あか あお きいろ いろんなクレヨンを つかっています

 ミリーは ひさしぶりに ロンタンがかくえをみたくなったので こえをかけることに しました

「ねえねえ ロンタン きみがかいているえ ぼくにすこしみせてよ」

 するとロンタンは びっくりしたようすで ミリーを みあげました

「わっ ミリー いつからいたの? びっくりしたよ いまはね とりのえを かいてるんだ ほらこれ なんのとりだか わかる?」

 そういうと ミリーに かいていたえを みせました

 それをみたミリーは びっくりしました なんのとりか さっぱりわからなかったのです きいろのくちばし あかいろのはね あおいろのあし こんなとりは みたことがありません

おもわずミリーは「こんないろのとり いるわけないじゃん」と いいました

 するとロンタンは こういいます

「ふふっ ミリー これはね カラスだよ」

 ミリーは キョトンとしました

「ロンタン カラスみたことないの? ほら あそこにいる まっくろのとりだよ」

 たまたま ちかくでカラスが あるいていたので ゆびをさして おしえてあげました

「うん まさにあのカラスを ぼくはかいているんだよ」

 たしかに えのカラスと ちかくにいるカラスは かたちがすこし にています でも いろが ぜんぜんちがいました

「ロンタン それじゃ カラスと よべないよ ほら このくろの クレヨンを つかわないと」

 じめんに おいていた クレヨンセットから くろのクレヨンを もちあげました

「そんなの わかっているさ でもね あのカラスは ほんとうはこんないろに なりたかったんだと おもうんだよ」

 そういうと ロンタンは ちかくであるいている カラスに じぶんのえを かさねました するとびっくり えのなかのとりが はばたきはじめました はねをキラキラさせて ほしのように かがやいています 

「わあ!」

 ミリーは おどろきました すると ロンタンは こういいます

「ほら みてのとおり ぼくは めがわるいんだ だからぼくは じぶんの かんじるままに えをかくんだよ ほらね ぼくがかいた カラスは すっごくたのしそうでしょ?」

 ミリーは しばらく えのなかの カラスを みつめていました

「ほんとだ すっごくたのしそう でもなんでだろう ロンタンは えがじょうずとは いえないよ それなのに ぼく このえが とっても すきなんだ」

 ミリーは ふしぎなきもちに なりました ミリーよりも えがじょうずな ともだちは たくさんいます それなのに ミリーのえは  すごくかがやいています

「ねえ ロンタンは がっこうで1ばんに なりたいと おもわないの? ロンタンは なんにも1ばんじゃないのに すごくたのしそうで すこし うらやましいんだ」

 ロンタンは くびをかしげて キョトンとしました

「1ばん? ぼくはそんなの いらないよ だってほら じょうずなカラスをかかなくたって こんなに かがやいているじゃないか」

 えのなかの カラスが また はねをひろげました

「だいじなのはね じぶんのこころが キラキラしているかだよ こころがキラキラしていたら へたくそだって いいじゃないか 1ばんなんかにならなくたって いいじゃないか」

 ロンタンはそういうと カラスのえを ミリーに あげました

「おっと もうこんなじかんだ ぼくはもうかえらなきゃ ミリー こんどいっしょに おえかきしようね ミリーがかく カラスもみてみたいしさ」

 ロンタンはそういうと うたをうたいながら かえっていきました とてもじょうずとはいえない うたでしたが たのしそうにうたうロンタンは そらを おさんぽしているように みえました

 そんなすがたをみて ミリーは こころが すーっと かるくなりました

「1ばんなんて いらないんだ これからは ぼくのこころが キラキラすることを さがすんだ」

 ミリーは おおきなこえで うたいはじめました じょうずではありませんが うたにあわせて すべりだいや てつぼう まわりのきが みんなおどりはじめました まるで コンサートのように みんなが キラキラしています

 うたのさいごに かぜが「ピュー」っとふいて えのなかの カラスが「カー!」と なきました


 はるのあるひ ミリーは おともだちをさそって おはなみをしています

 チョッピや ロビーン フリルが きています みんなおかしを もってきて おさらに ひろげました

 みんなでおかしをたべながら おはなししていると チョッピが「みんなで かけっこしようよ」といいました ロビーンや フリルは「チョッピに かてっこないよ」と いやがります

 それをみたミリーは チョッピに こういいます

「チョッピ ぼくたちはね きみが1ばん うんどうができるのは わかっているんだ だからさ こうしよう みんなで リレーをするんだ!」

 いつもかけっこを いっしょにしている ミリーのことばに チョッピは おどろきました

「リレー? それじゃ 1ばんが きめられないよ」

 チョッピは すこし ふまんが あるようです

「でもね チョッピ 1ばんをきめることより たいせつなことが あるんだ それはね こころが キラキラすることなんだよ」

「こころが キラキラ? そんなこと ぼくは かんがえたことも なかったよ」

「ぼくもずっと 1ばんに なりたかったよ でもね このまえ ロンタンが おしえてくれたんだ ロンタンは まいにちがとっても たのしそうなんだ」

 ミリーは ふゆのあのひを おもいだしながら はなしました

「そっか たしかに そのほうが たのしいのかも ミリー たいせつなことに きづかせてくれて ありがとう」

 チョッピは ほんとうに たいせつなことを しりました

「そうときまれば みんなで ちからをあわせよう!」

 チョッピは みんなと リレーをすることに さんせいしました

ほかのみんなも「そうしよう!」「わたしも!」と げんきに こたえます

「じゃあぼくが はしりかたを おしえるよ! かぜのように はやくはしれるように なるさ!」

 4ひきは リレーのれんしゅうを はじめました みんなとっても たのしそうです

「そうだ! こんどはあたしが おべんきょうを おしえてあげるわ」

 こんどは ロビーンが いいました

「だったら あたいも うたを おしえてあげる きっとみんなで うたったほうが たのしいもの!」

 フリルも いいました みんなそれぞれ「やったあ!」「うれしい!」と よろこんでいます

 そんなようすをみた ミリーは えを かきたくなりました なのでもってきた クレヨンと がようしをひろげて いきおいよく えを かきはじめます

 そのようすをみた みんなは とつぜんのできごとに おどろきました

「あら ミリー きゅうにどうしたの?」

「そのえ・・・ ぼくたちを かいているの? ははは あまりじょうずじゃないけど なんだか とってもたのしそう!」

 えのなかには チョッピ ロビーン フリル そして ミリーが います えのなかの 4ひきは うたを うたっているようでした

「あれれ みて えのなかのぼくたち うごきだしたよ みんなたのしそうだね」

 かんせいした えが とつぜん うごきはじめました みんな うたっておどって とっても たのしそう まわりの きや とりたちも おどっています

 すると かぜが「ピュー」っとふいて さくらがたくさん まいました

 えのなかの4人は まっているはなびらを おいかけるように みんないっせいに はしりだしました

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