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【小説】噛ませ犬ごはん

 今週もまた合コンに参加することになった。これで6週連続だ。なぜこんなにも僕みたいな個性のない存在感おばけが誘われるのか。その理由は明確で、僕が噛ませ犬にピッタリだからだ。今日も定時が近づいてきた。残業が確定している新人たちに妬みさえ覚える。

(今日は楽しみましょう!乾杯!)

 今週もまた焼肉だった。隣には仕事中よりも気合が入った上司。前には脳の殆どを眠らしていそうなギャルが2人。今日も僕の活躍の場はなさそうだ。
 会が始まるや否や上司がトングを独占し、できる男アピールを惜しみなく発揮する。

(松田さん、お肉焼けるんですね〜!素敵〜!)

 馬鹿な女特有の、語尾だけ持ち上げる発音で上司を褒める。上司はいい気になって肉を取り分け、僕には半分焦げた肉が配られた。所詮噛ませ犬だ。噛ませ犬ご飯はこの程度だろうとは思っていたが、いざ目の前で対峙すると、野良犬の方がまともなご飯を食べられるような気がした。
 僕は目の前の肉を勢いよく噛んだ。噛んで噛んで何度も噛みちぎった。ギャルには目もくれない。クソ上司を視線の先に置き、暴犬みたく歯を見せつけ肉を噛みちぎった。

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