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青い灯りの爪

 丸窓の向こうで銀色に垂れた雲が空の姿を隠そうとしている。
「すっかり寒いね」とこぼした。十月の暮れの空だった。灯油ストーブの前を陣取る彼女は爪をふうふう乾かしながら首だけで頷いた。彼女の爪は青い水晶を嵌め込んだみたいで、ストーブの火のちろりやら天井のぱっぱの灯りのせいで、幻想の生き物のように光の変容を見せた。
「できたわ、見て」手指の先の宝玉をまじまじ見つめて彼女が云い、ついと指の先を揃えて見せた。
「綺麗だね」と僕は言った。ほんとうに綺麗だと思った。夜空の国の珠の微々が彼女の指先に宿っていた。
「綺麗でしょう」彼女は確かめるようにそう言うと、慈しむように手指を折り畳んで自身の芸術をしまうようにした。
 丸窓の外はそのうち、向こう山にかかる夕陽の光の稜線を映し出す頃になった。

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