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 彼女は奥行きのない平坦な白い霧の中に呑まれていった。十月の晴れきらない空のところに、太陽の光がぼんやりとしている。枯れたいちじくの木の下で、丸っこい小さな石ころ兵がこちらを見つめていて、僕は彼を見つめ返した。
 石ころ兵はものを云わない。彼は黙って僕を見上げるばかりだった。

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