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光の波にいた

 まだ温度のない景色のなかに彼はいた。波にひざまで浸かって、水平線の先を見ているらしかった。死んで打ち上げられた海中狐かいちゅうこの白い尾毛が波の先に触れた。
 日は昇り始めた。光が水面に広がって赤い。

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