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博物館

 博物館には特別な緊張感がある気がする。それは例えば市立の大きな図書館みたいなもので、私語はもちろん、レジ袋のかさかさという音や鼻をかむ音、靴音、服の擦れる音にだって気を遣わなければならない。まるで息が詰まりそうだ。僕らは眠った子どもを起こさずに歩くみたいに慎重な足取りで館内を見て回った。プーリネンスの王冠があり、先の折れた杖があった。それらはきちんとしたガラスの箱に収まっていた。照明の穏やかな光に照らされて、僕らは呼吸も忘れて見入っていた。

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