転送
気がつくと胸像が並ぶ暗い道にいて、僕は倒れた仲間を起こしながらその道の先に目を凝らした。
「ここは」怯えた声でランテコが云った。
「飛ばされたんだ」と僕は言った。「ゆめみまどうが唱えた魔法でね」
僕らは魔王を倒しにプーリネンス城へ向かっていたんだけれども、その途中現れたゆめみまどうの魔法で他の場所に飛ばされてしまったのだった。
「さいわい、みんな一緒みたいだナ」と半魚人のドドンが云った。
「ねえここ、魔法が使えないわ」と魔法使いのルルールが云った。
「それは開幕早々に極大魔法撃っちゃったあなたのせいじゃないの」と苦姫が云って、人差し指の先を息で吹いた。指の先に光が立ち、あたりが照らされる。胸像の陰影が濃く浮き立って不気味さが増した。
「コイツら、まさか動き出すんじゃないだろうな」と研師のクルルクが云った。
「ねえあそこ、見て」と弓使いのトーが指をさした。苦姫の照らした道の先に木製の扉が見える。
「あれ出口じゃない?」
「そうかも」と猫のビンタが声を上げた。
「あれは罠だ。俺にはわかる」とクルルクが云った。
「ずっとここにいるわけにもいかないでしょ」とルルールは荷物を持ち歩き始めた。僕らも歩き出した。クルルクは黙ってついてこなかった。
扉を抜けるとそこには夜中の森に囲まれた図書館があった。
「入ってみよう」と僕は言った。「ここを出るヒントがあるかもしれない」
僕らは図書館に入った。裏口の鍵が開いていたのだ。しばらく歩いて、歴史の棚で魚を見つけた。生態系の変化によって、陸から上がってきたばかりの大きな魚だった。
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