
謎の中国からの赤い電波・中国国際放送とは?③~「日本軍よ!投降せよ」洞窟からの戦時プロパガンダ放送
ここで、中国国際放送(China Radio International、略してCRI)の歴史について、その始まりから見ていこう。
1940年代初頭、中国陝西省の延安にあった「延安新華放送局」は、黄土高原の洞窟の一室から放送を始めた。この放送局は、日中戦争の中で中国共産党の重要な情報発信基地としての役割を担っていた。主に放送されていたのは、日本軍への投降を呼びかける内容で、まさに「プロパガンダ放送」の一環だった。日本語や英語でも放送が行われ、特に日本軍の兵士に向けては、反戦メッセージや投降を促す内容が多く含まれていた。
技術面では、当時の設備は非常にシンプルだった。送信機の出力は数百ワット程度で、現代の放送局と比べるとかなり小規模だった。部品の調達が難しい中、技術者たちは使用済みの真空管を修理して再利用したり、古い電線でアンテナを補修したりして、何とか工夫していたと言われている。電力供給も不安定で、手回し発電機を使うことが多かったとも言われている。
放送内容の中心は政治的なメッセージだったが、当時の戦時体制ではこれは非常に一般的なことだった。具体的には、中国共産党の政策説明や戦況報告、敵軍に向けたプロパガンダ放送などが主な内容だった。それでも、民謡や演劇の実況放送も行われており、これらは心理作戦の一環としても使われていた。
この放送局は、1949年に中華人民共和国が成立した後、「北京放送局」として再編され、その後、現在の中国国際放送(CRI)へと発展した。
現在のCRIは、北京市の中心部の西側に本部を構え、放送設備も現代的に整備されている。放送内容は、建国初期の革命プロパガンダから、文化交流や国際理解を深める幅広い内容に変化している。

さらに、2018年にはCRIが中国中央テレビ(CCTV)の国際部門などと統合され、中国グローバルテレビネットワーク(CGTN)の一部となった。これは、中国の国際メディア戦略の一環として位置づけられ、より効率的な対外発信を目指す動きとされている。