恋をした瞬間
高校生のころ、まだ目も開かない赤ちゃん猫を保護したことがある。
おじいちゃん家の使われてないお風呂場で。
どうやらお母さん猫がこの子だけを置いてったようで、迎えにくることはなかった。
どこまで生きてくれるかわからないが、スポイトを使ってミルクを飲ませたり、排尿、排泄も介助した。
まだ赤ちゃんなので夜泣きもすごく、人間の赤ちゃんのように2時間置きのミルクと排泄が必要だった。
学業もあるが、それよりもこの命を救たくて、献身的にお世話をしたのをいまでも鮮明に覚えている。
母には1〜2週間の命だろうといわれた子猫は、わたしたちの想定を裏切り、日に日に大きくなっていき、わたしたち家族の一員になっていた。
怖いモノ知らずの子猫は目が見え歩けるようになり、動物嫌いなおじいちゃんのあぐらのスキマに入り込んではポイっとされ、それでもめげず、同じことをするうちに、おじいちゃんの心までもつかんでしまった。
ウチの子になって4年後、わたしの静止する声も届かず車道に飛び出し車にひかれたものの、玄関まで戻ってきて苦しみながら生き絶えたのだ。
わたしは号泣した。
それ以来、猫は飼わないと決めた。猫だけじゃなく、動物は怖いと強く心に印象づいてしまったのだ。
ただ、子どもの情操教育のためと、ハムスターを飼ったことがある。ちょこまかと逃げまわり、タンスの裏で動かなくなっていたこともある。
動物っていっても命ある生き物だ。いつかは天国にいってしまう。
だから生き物を飼うことをいつしか避けるようになったが、夫も子どもたちも生き物大好き。
何回かキノボリトカゲ?を育てたこともあるが、あまりかわいいとも思えなかった。
わが家にはいまうさぎがいるので、この子が最後のペットだとも思っている。
だけど、最近姪っ子がうちの実家でワンちゃんを迎えたのだ。それも2匹のきょうだいワンちゃん。
今日、実家に用があり実家に帰ると、ゲージの中でかわいい2匹のきょうだいワンちゃんがわたしを見て、
「あそんで!だっこして!」と大はしゃぎ。
わたしは犬は苦手だ。昔追いかけられて以来、子犬でも近寄られるとビビってしまう。
昔、夫の実家にも小型の白くて大人しくて上品なキレイな犬がいたが、頭をなでなでするだけでどう接していいかわからずだった。
そんなわたしが、姪っ子の飼った2匹のきょうだいワンちゃんに、メロメロになってしまったのである。
こんな気持ち、生まれてはじめてだ。
犬っていい!わたしも飼いたい!とまで思った。
抱っこしたら、わたしの耳を必死でペロペロなめて、くすぐったさのあまり笑ってしまう。
なんてかわいいのだろう。
犬に恋をした瞬間だった。
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