ライブが苦手になった話
私には中学生くらいの頃から今現在も尚、
ファンクラブに入っているほど好きなバンドがいる。
学生時代はグッズを買い漁り、そのバンドが出るテレビ番組は全部録画、CD、DVDもほぼ毎回買い、ライブも時間と親が許せば毎回参戦していた。
どのくらい好きかというと、学校の先生までもが私にそのバンドのグッズをくれたりしていたのだ。
しかし、社会人になって4年間、1度もライブに行っていないどころか、グッズすら買っていない。なんなら少し避けていたのだ。
別に嫌いになったわけではないはずなのだが、毎日が忙しく、一人暮らしでいかにお金がすぐ無くなるのを実感したりしていたからだと思う。
学生の頃のようにはいかない、見ると好きが溢れ散財してしまうため、避けるようになっていたのかなと、なんとなく、思っていた。
社会人5年目に入り、仕事もある程度落ち着いて貯金もできてきた頃、恋人がそのバンドのライブに興味があるという事を知った。ファンクラブは退会せずずっと在籍している自分は、チケットも取りやすいし、
じゃあ行くか、と何も深く考えずに4年ぶりの参戦を決めた。
会場に行くと、人混み具合とその人混み皆がそのバンド関連の物を身につけているライブならではの状況に、気持ちが昂った。
グッズを一通り購入し、会場に入る。
決していい席とは言えなかったが、ちゃんも肉眼で本人たちが見える席にはつけた。
久々のライブな為、予習はしたが、知らない曲ばかりだったらどうしようという心配が勝つ。
しかし、一曲目から知ってる曲でテンションは上がり、その瞬間から学生時代に戻ったかのように手を挙げ、はしゃいでいた。
ある程度曲が進み、好きなメンバーが目の前を通る。
全力で名前を呼びながら手を振る。
序盤からどこかにあった米粒ほどの違和感が
この辺りでだんだん大きくなる。
自分を客観的に見てしまうのだ。
普段は自分が主人公で主体で動いている。
話し相手もほぼ自分を認知し、笑い合う。
しかしこのアーティストと自分は他人でしかない。
この会場の全員が見ているのはあの人達で自分ではない。当たり前のことがどうも寂しく、何故か身の程知らずの嫉妬が沸々と湧き上がってくるのだ。
本気で有名になりたいと思ったことも、アーティストを目指したこともないただの一般人なのに、その感情が出てくるのだ。
いいなぁ羨ましい、では終わらない、靄がかかったような気持ちになる。
最高だったという気持ちと、その嫉妬が半々で現れる。だからライブの後は何故か少し落ち込む。
この違和感を感じる人は他にいるのだろうか。
もしかしたら心のどこかで有名になりたいのかもしれない。だからライブから自然と遠ざかってしまっていたのかも知れない。
そう思うことで少し納得した。
思い返せば、部活動をしていた時も、そのスポーツの世界大会などは見たくなかった。
それも嫉妬からくるものだったのだと思う。
自分はこんなにも嫉妬深く、欲深い人間なんだと再認識させられた。
自分に自信がつくまではしばらく、ライブからまた遠ざかっていようと思う…
この判断が合っているかどうかはわからないが、
いつかこの黒い靄が晴れる日は来るのだろうか。