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また、銀行が潰れたってさ ② 国債は利子を生むニワトリ? (愚痴日記 第15日)

 アメリカのファースト・リパブリック銀行が、潰れちゃった話の続き。
 投資していた国債が、FRBの金利引き上げて値下がりして損失が発生、それが引き金になって預金が大量に流出したのが主な要因だという。

 でも、国債の金利上昇で、なんで価格が下がるんですか?、とプロデューサーSに聞いた結果、社食でランチしながら講義を受ける羽目になった。

「で、国債金利が上昇すると、国債の価格が下落するからくりだ。」
 
 始まってしまった・・・。

 私がランチでオーダーしたのはオムライス、卵の価格が急上昇していることから、値段が上がっていた。
「オムライス、説明するのにちょうどいいものを注文してくれたね。卵好きなんだね。」

 はあ?
 国債と卵が関係あるっていうの?

「国債は利息という卵を産むニワトリなんだ。」

 国債がニワトリ?

「国債は政府が発行する借用証書だ。政府にお金がないので、国債を販売して代金を受け取り、税収の不足分を補っている。」
「借金をするわけだから、利息を支払うよね。それが『表面金利』と呼ばれていて、経済情勢や中央銀行の金融政策などを反映して決まって行く。そして、額面価格、日本の場合は100円で、国債は発行されているんだ。」

 ところで、ニワトリはいつ出てくるの? 

「この表面金利を仮に5%としましょう。国債を購入した人は、例えば期間が10年の国債だったら、毎年5%の利息を10年間もらい続けることができる。つまりこの国債保有している人は、毎年5%の利息という「卵」を生み続けるニワトリを飼っていることになるんだね。君だったら、どんなニワトリがいい?」

「もちろん、たくさん卵を産むニワトリです。」

「そうだよね。で、国債は毎月発行されていて、表面金利も変動している。つまり、卵を産む能力が違うニワトリが、毎月登場してくるんだ。」
「君が表面利回り5%、つまり「ニワトリ(卵5%)」を、仕入れてきたとする。ところがその後、金利が上昇し、ニワトリ(金利7%)が売られ始めたら、どう思う?」

「損しちゃった・・・と思います。できれば、ニワトリ(卵7%)に交換したいと思うでしょうけど、無理ですよね。」
「そうなるね。同じ国債というニワトリでも「卵5%」と「卵7%」、そのどちらの価値が高いのかはいうまでもない。これがニワトリ価格に反映されるんだ。」
「もし、ニワトリ(卵5%)を保有している人が、これを売却して「ニワトリ(卵7%)」に買い換えたくても、そのままでは誰も取引には応じてくれないよね。どうしても売りたい場合には、どうすればいいのか・・・。」
「売ろうとしたら、2%の利息の差を埋め合わせるだけの値引きをする必要に迫られる。国債取引では、新たに発行された国債(「新発債」)の金利が上昇すると、すでに発行されている国債(「既発債」)の価値が相対的に低下することになる。額面金額の100円を割り込んで、95円、80円・・・など安くなり、2%の金利差を埋め合わせる水準にまで達することになる。これが、国債における「金利上昇=価格下落」のからくりなんだ。」

何となく分かった気がする。

「反対に新たに発行される国債金利が低下するとどうなる?」
「飼っているニワトリの価格が上昇するということですか?」と私。
「その通りだ。自分の飼っているニワトリの価格が相対的に上昇、つまり国債価格が高くなる。金融市場で金利が下がり、ニワトリ(卵3%)が出てくるようになった場合、ニワトリ(卵5%)の人気が上昇し、額面価格を超えて105円などで売買される事になる。」

 なるほど・・・。頭の中を(卵5%)、(卵7%)といった札を下げたニワトリが歩き回っていたけど、少し整理ができてきた。

「分かってきたかな?。国債市場では毎月、新発国債という「新人ニワトリ」が売り出される。この新発国債の表面金利、つまり卵を産む能力が、すでに売り出されている「先輩ニワトリ」、つまり既発債と比較される。既発債の表面金利は変更できないから、価格を調整することで、結果的な新発国債と同じ金利になるように調整されるんだ。」

「さあ、復習だ。もし、新発債の金利が上昇すれば?」
「既発債の価格は下がります。金利の高い新人ニワトリが100円で売る出されるなら、劣っている先輩ニワトリの価値が下がって当然です。」

「その通り。で、今回のファースト・リパブリック銀行の破綻劇だ。この銀行は、大量の国債を買っていた。ところが、FRBが金利を引き上げる金融引き締めに動いた。この結果、やたらとたくさん卵を産む「ハイパーニワトリ」みたいなのが、次々に登場してきた。これによって、それまで売られていたニワトリの人気は急落し、価格が急低下してしまった。少ししか卵を産まないニワトリを、大量に飼っていたファースト・リパブリック銀行は、大損しちゃったというわけなんだ。」

「そんな銀行、絶対に生き残れないですよね。」
「そうだ。ファースト・リパブリック銀行に未来はない・・・、と考えた投資家が株を売りまくり、株価は8割も下がり、ついに潰れちゃったんだ。」

 ファースト・リパブリック銀行の金庫が、あまり卵を産まないニワトリで溢れてる様子が頭に浮かんだ。ダメだと思われるのも当然ね。

「実は今、同じような状況に置かれている銀行は少なくない。FRBは、インフレ対策として、金利を急上昇させてきた。この結果、国債で損失を計上している銀行が急増しているんだ。」
「金融引き締めの副作用ということですね。」
「そうだ。だから、FRBは金融引き締めを、いったんお休みすべきと言う声も出てきている。」
「でも、インフレ対策も重要ですよね。」
「インフレ対策と銀行経営の安定化、二者択一を迫られているのがFRBなんだね。ただ、現時点では、金融引き締めを止める気配はない。したがって、今後も破綻する銀行が出てくるかもしれない・・・・。」

「アメリカの銀行、ヤバいですね。」

「でも、日本だってヤバい銀行がある。知っての通り、現在、日本の金利はほとんどゼロだね。国債金利も10年物で0.5%、つまりほとんど卵を産んでいないニワトリで埋め尽くされているんだ。中でも、とりわけたくさん、ニワトリ(超低金利)というダメダメなニワトリを、ビックリするほど大量に飼っている銀行があるんだ。どの銀行だと思う?」
「どこですか?みずほ?それとも三菱UFJ?」
「ブー!」

「正解は・・・、コーヒーでも飲みながら教えてあげよう。」

え、まだ付き合わされるの?
でも、正解は聞きたいから、ついて行くことにした。

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