マスク氏がTwitter社の社員の半分を解雇するという話と社会のダイナミズムについて
イーロン・マスク氏による、ツイッター社の従業員を半分に削減する方針が大きな話題となっています。
驚いたことに、報道によれば、米国だけではなく日本法人でもその方針のようです。
日本における整理解雇(経営上の都合による解雇)は容易ではありません。
労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。
正当性の無い解雇は無効になり、整理解雇の正当性は、以下の4要件によって判断されます。
・人員削減は本当に必要か
・解雇を回避するための努力を尽くしたか
・解雇される対象者が合理的に選ばれているか
・説明や協議を尽くしているか
具体的には、企業の経営状況や、役員の報酬カット、新規採用抑制など解雇回避の取組、労働組合との話し合いや、従業員への説明の実施の有無等で総合的な判断が行われます。
その意味では、ツイッター社の経営状況の悪化があるにしても、報道にあるように、メールで一方的に解雇通知を送っているようなやり方は、上記の判断には不利に働くはずです。
しかし、こうした労働規制は、果たして日本のためになっているのでしょうか。
産業の盛衰に合わせて、労働力もシフトしていかなければならない中、日本のような労働規制は決してプラスではないと考えられます。
そもそも、最近の日本ではジョブ型雇用という考え方が広まっていますが、現状の日本の労働規制にはそぐわないものです。
といいますのも、米国などでは、労働者毎に仕事や責任が明確になっていて、社会の変化等によってある仕事がなくなれば、その仕事をしていた労働者が整理解雇となるのはある意味自然と考えられているからです。
ですが、日本では、労働者の仕事や責任の範囲があいまいで、仕事内容にかかわらず雇用契約を結んでいるような部分があり、これと解雇規制がセットになってしまっていると思います。
会社からしたら、解雇困難なのだから手広くやってくれ、労働者からしたら、何でもやるのだから雇用は守ってくれ、ということになります。
しかし、繰り返しになりますが、日本の雇用の在り方が労働者のためになっているかは疑問が残ります。
正社員が解雇のリスクから守られる代わりに、企業が雇用の柔軟性を確保するため派遣社員のような非正規雇用が進み、その待遇の低さが問題化しています。
実は、米国にもテンポラリー・ジョブといわれる非正規雇用があるんです。
ですが、米国では同一労働同一賃金の考えの下、同じような問題はそこまで問題視されていません。
でも、日本だって、同一労働同一賃金が盛んに言われているはずですよね。
なぜこのような違いが出てくるのでしょう。
それは、日本では、先ほど述べたように労働内容と雇用契約の関係が明確化されていないため、日本型雇用というもの自体が、同一労働同一賃金を上手く機能させる仕組みになっていないからです。
そして、正規雇用が手厚く守られるほど、そのしわ寄せとして、正規雇用ではない労働者の待遇が悪化することになります。
結果、企業は正規雇用の採用に慎重になりますし、労働者も正規雇用から外れるおそれもある転職には慎重になります。
これでは成長分野への人材シフトも容易ではありません。
ここ数十年、アメリカの経済成長のはるか後塵を拝してきたのは、様々な要因があると思いますが、一つにはこの雇用の流動性の低さもあると言われています。
私たちの社会では、非正規雇用を正規雇用にすることばかりを訴えますが、これが正規雇用の立場を強化し、正規雇用以外の立場を悪化させていることは大変皮肉なことです。
誰かを守っているつもりで、日本全体は沈んでいるのかもしれません。
偉そうなことを言いましたが、私だって雇用が不安定になることは嫌です。
とすれば、日本経済が閉塞するのも無べなるかなと思う今日この頃です。
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