女の背中

自分でも遊び人だったと思う。
派遣で来てるこの女を食事に誘ったのだって
下心があったからだ。

ホテルでその柔らかさを存分に味わって
もっと普段見せない顔を見てやろうと笑ってた。

別に惚れた訳じゃない。
今夜だけで構わない。
だったら楽しんだもん勝ちだ。

ただそんな気持ちだったんだ。
あの電流が身体を貫くまでは。


女を伏せて後ろから責めた時
白い背中がうねるのが目に入った。
その時なんだ。
はっと息を呑んだ。

美しい。
なんて美しい姿なんだろう。
その背中を見て
快楽と吐息に揺れる肌を見て
ただ魂を抜かれた様に呆然とした。

両の手を繋がったままて伸ばす。
その背中を撫でる。
女の肌がまた跳ねる。
それが美しさをまた教えてくれる。
あんなにうっとりとした時間は
どんな女と遊んでも味わった事が無かった。



そいつが派遣期間を終えオフィスを去った時
俺はもう真面目になろうと思った。

今はペアのリングが
きっと何かの契約を示してるんだろう。

彼女がベッドから抜け出しバスルームへと向かう。
少し振り返って笑い、美しい背中を揺らしていく。

俺は彼女の後を追う。

新しい会社で誘ってくる男がいる。
電話で聞いた時に味わった気分。
今はもうそれだって起きやしない関係だ。

でもきっと
俺はいつだって
これから何年共に過ごしても
関係が父と母に変わっても

この背中を追う。
誰にも触らせたくない。
自分だけの奇跡のままにしたい。

お前がこんな風になるなんてな。
友達は皆んな呆れた様に笑った。
そんな皆んなは式を盛大に祝ってくれた。 

今日はラブホじゃない。
形が変わった初の旅行は東京の有名なホテルにいる。 

遠くにはこれからいつだって行けるから。
そういう彼女の言葉が妙にリアルに聞こえた。

日常の中•小さな変化•生きる営み

彼女が俺を変えた。


シャワーの流れを弾くその背中が見えた。
いつもの様に後ろから抱き締める。
それが幸福な愛情表現だと知っているから
彼女、、いや妻となった女性は少しはにかんだ。

変化した日常
変化した人生
変化する暮らし

それがあの美しい電流の眩さから始まったなら
いつも生きる東京を2人で歩き直してみよう。
きっと新しい眩さが現れる。

だからここから始めるのはお互いに賛成だった。

朝にはまだ時間がある。
そっとその背中にキスをした。


to be everyday life

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