研究分野にも「ゲームチェンジ」が起こりつつある。
大きな集団であればあるほど「ゲームチェンジ」が起こるには時間がかかる。「独創性」「創造性」「革新性」を重んじる研究分野においてもそれは例外ではない。
ゲームチェンジが起こる要因はいくつもある。
・AI/データサイエンスの急速な進化
・気候変動問題の顕在化
・エネルギー/資源問題の表面化
・理科離れの深刻化
・失われた20年
・世代交代
・ディープテックの推進
・大学の存在意義
・スマートフォン革命
など、変化が起こる動機しかないとも言える。
感度の高い研究者はすでに新しいマインドセットに切り替えて自身の研究を微調整し、すでに成果を出しつつある。
結局、ゲームチェンジが起こる最も大きな要因は世代交代だと思う。新規性を重視する研究者においてもマインドセットの転換は意外と難しいのである。どの分野においても似たようなものであろうが、前の世代の引退に起因する単純な世代交代がゲームチェンジのタイミングになるだろう。次の世代の研究者が創る世界はこれまでとは随分異なるものになると予想されるし、また、そうでなけれならない。
そもそも21世紀における科学とは、社会の中でどのような位置付けになるのだろうか。それは、科学が未発達だった19-20世紀とは異なる位置付けであるはずである。科学の教科書が無かった頃と教科書が出来上がった現代、テクノロジーが未発達だった産業革命前と近代化され生活が便利になった現代では、科学の在り方は大きく異なって然るべきである。
万有引力が分からなかった時代、地球が太陽の周りをまわっていると分からなかった時代、飛行機が無かった時代、洗濯機が無かった時代、そんな時代では、率直に疑問に思ったことを解き明かすことが科学になったり、利便性を科学で追求することで新しい価値観が生まれたり、何も無かった時代における「基礎研究」「応用研究」は、科学が成熟して生活が便利になった現代の「基礎研究」「応用研究」とは異なるものであると思う。つまり、「基礎研究」「応用研究」は、時代によってその性質は変わるはずであるが、同じ言葉であるがゆえに、あたかも同じ性質として伝わってしまっていることがある。
「科学者の単純な興味で追究する基礎研究は否応なしに尊重されるべきである」という文章が一見普遍的に成り立つように見えてしまっているが、現代において、本当に成り立つかどうかは疑問である。また、科学者であれば疑問に持つべきではないか。
「ゲームチェンジ」は、研究という領域の中だけで起こっているのではなく、科学の意義そのものに対しても起こるべきである。一研究者である自身の願いとしては、ゲームチェンジが起こった科学の先に、人が幸せになる未来の到来を切に願うばかりである。
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