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ポテチとホチャプリ

また目が覚めてしまった。枕元のスマホの画面をポンとタッチすると、午前3時16分。やれやれ。表示されるのが「333」や「321」のようにすっきりした数字でないと、余計につまらない。

何やら毎晩、必ず3時台に目が覚めてしまうようになった。そのまま眠れる日もあれば、何度も寝返りを打って、うつ伏せのまま首を右にひねったり、左にひねったり、どんなに姿勢を変えても落ち着かず、ますます眠れなくなることもある。観念してひたすら目をつぶり、自然に眠りに落ちることを願いつつ、とにかく朝になるのを待つ。

こんな状態になったのは、日本に戻った7月初頭のこと。自分には珍しい時差ボケだろうと思っていたが、3時台に目覚める癖はなかなか抜けない。これも老化現象、仕方あるまい。とはいえ、眠れずにじっとしてる時間ほど退屈なものはない。あれやこれやと考えるうちに目が冴えて、ついに空が白み始める。かすかに鳥のさえずりが聞こえたかと思うと、だんだん声が増えていく。ここは標高1000メートルに近いため、野鳥の種類が多い。時計を見ると、4時過ぎ。まあ、朝と呼んでいい時間だ。

あ、遠くでカッコウが鳴いている。その辺りで朗々と滑らかな美声を発しているあの鳥は、何だろう。チルチルミチルの青い鳥のような姿を勝手に想像する。その声を遮るように、ペチャクチャとおしゃべりが止まらないような鳴き声。これはきっと、ウッドストックみたいな鳥だろうな。別の方向からは「チチンプイノプイーッ」と、かん高い声もする。ウグイスのさえずりも聞こえてきた。遠くからだんだんこちらへ近づいてくるのがわかる。ただ、「ホー、ホチャプリ!」と、ちょっと独特な鳴き方をする。「ホケキョ!」は4回に1回くらい。そのときだけは「ホ、ホ、ホ、ホケキョ!」と、鳥の鳴き声図鑑の音声のように見事だ。声の主は1羽だけだろうか。

早起きは三文の徳。早起きした鳥たちは、ミミズを捕まえたんだろうなと、くだらないことを考えながら、布団の中でひたすら時間が経つのを待つ。そのうちにミソサザイやらキビタキやら、野鳥の大合唱が始まり、ブラボーと手を叩いてあげたくなる。と思いきや、一斉にピタリと鳴き止み、不気味なほどの静寂が訪れる。カサコソと葉っぱが揺れる音しかしない。皆、鳴き疲れたのか、二度寝しているのかと、人間目線で鳥の世界の営みを想像してみる。やがてカナカナとヒグラシが鳴き始める。5時を過ぎた。また一瞬、静かになり、しばらくすると違う鳥が鳴き始める。ヒワやヒヨドリに続いて、とうとうキジバトやカラスの鳴き声が混じる。6時か。そろそろ人間も起きる時間だ。

そういえば数年前、どうしても「ヒー、ポテチ!」としか聞こえない鳴き方をするウグイスがいた。その分、谷渡りはめっぽううまい。長いこと息もつかずに鳴き通すその声だけが、独唱状態で響き渡る。ほかの動物たちも聞き惚れていたのだろうか。そこへ急に「ポテチ!」とズッコケるので、われわれ人間たちには愉快でたまらなかった。ウグイスはいつも暑くなると山へ帰ってしまうが、その年は8月を過ぎてもそこら辺にいた。あの声が止めば、夏休みも終わりに近いということ。それが嫌で、かわいい声の「ポテチ」をいつまでも聞いていたかったものだ。

今年の「ホチャプリ」も長いこと楽しませてくれた。8月に入っても朝昼夕と必ず庭にやって来て、珍しいことに暑さの中でもさえずっていた。さすがに10日を過ぎた頃から音沙汰がなくなり、しょんぼりしていたところ、17日のお昼頃に近くで「ホチャプリ!」といつもの声がした。まだいたんだと、喜んで耳を澄ませる。ひとしきり鳴いた次の瞬間、ふと静かになってしまった。

思えば、ポテチはよく同じ場所で長いこと歌っていたが、ホチャプリはあまり長居をしなかった。その代わり、1日に何度もやって来た。声が近くなったり遠くなったり、しょっちゅう移動していた。ところが、その日に来てくれたのは1回だけ。きっとあちこちで人気者だっただろうから、山へ帰る前の挨拶回りで忙しかったに違いない。


コンコンコンと聞こえてくれば、キツツキ

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