旧土人保護法 【現代語訳】

旧土人保護法がアイヌ差別を助長させた等の声があるが、本当はどうなのか。
フラットな目線で現代語訳してみた旧土人保護法を読んで頂きたく思っています。
都度わかりやすく加筆します。

まず始めに「土人」という言葉は「土地の人」という意味合いで、当時は普通に使われており特に差別的な言葉ではなかったようです。

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北海道旧土人保護法


第一条 北海道で農業に従事するアイヌの方々には一戸あたり最大で15,000坪(約50,000平方メートル)の土地を無償で提供できることが認められています。

第二条 第一条の土地の所有権には以下(1~4)の制限があります

1 土地を相続した人は、その土地を他の人に売ったり譲ったりすることができません。
また、土地に担保を設定したり、賃借権(賃料を支払う代わりに不動産を借りる権利)を与えたりすることもできません。

2 土地の所有者が、質権(権抵当)、地上権、または永小作権を設定することができません。
※質権(しちけん):お金を借りるときに物を担保として預かっておく権利です。
※地上権:他人の土地に工作物や竹木を所有するために、その土地を使用する権利です。
※永小作権:他人の土地で農作物を育てたり、牧畜をする権利です。

3 北海道庁長官の許可がないと、地役権を設定できません。
※地役権:土地を利用する権利です。たとえば、通行のための道を作るためや、送電線を設置するために使われます。

4 土地を留置権先取特権の目的としてはいけない。
※留置権先取特権:物を保管している人が、他の人よりも先にそれを取る特別な権利です。

4-1 北海道の長官の許可がないと、昔から持っている土地を他の人に渡したり、特定の権利を設定したりできない。
4-2 下付された土地は、30年後には税金を払わなくていい。

第三条 15年経っても耕作されていない土地は取り上げられます。

第四条 貧しい人々には、農具と種を提供することができます。

第五条 病気にかかり、自分で治療することができない人々には、薬の価格を支給することができる。

第六条 北海道旧土人の人々が病気や困難な状況で自立できない場合、救助を行い、救助中に亡くなった場合は埋葬料を支給します。

第七条 北海道旧土人の子どもが学校に通う場合、授業料が免除されることがあります。

第八条 北海道の旧土人共有財産(北海道のお金)から出るお金で、第4条から第7条にかかる費用をまかないます。
もし足りない場合は、国庫(国のお金)から支出します。

第九条 北海道のアイヌの部落には国庫(国のお金)の費用を使って小学校を設立することが出来ます。

第十条 北海道庁長官は、北海道旧土人共有財産を管理することができます。

第十一条 北海道庁長官は、北海道の先住民を守るために警察令(法律)を作りました。
違反すると罰金(2円以上25円以下)や禁錮刑が科されることがあります。


【原文】

朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル北海道旧土人保護法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月一日
内閣総理大臣 侯爵 山県有朋
内務大臣 侯爵 西郷従道
法律第二十七号
北海道旧土人保護法


第一条 北海道旧土人ニシテ農業ニ従事スル者又ハ従事セムト欲スル者ニハ一戸ニ付土地一万五千坪以内ヲ限リ無償下付スルコトヲ得
第二条 前条ニ依リ下付シタル土地ノ所有権ハ左ノ制限ニ従フヘキモノトス
一 相続ニ因ルノ外譲渡スコトヲ得ス
二 質権抵当権地上権又ハ永小作権ヲ設定スルコトヲ得ス
三 北海道庁長官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ地役権ヲ設定スルコトヲ得ス
四 留置権先取特権ノ目的トナルコトナシ
前条ニ依リ下付シタル土地ハ下付ノ年ヨリ起算シテ三十箇年ノ後ニ非サレハ地租及地方税ヲ課セス又登録税ヲ徴収セス
旧土人ニ於テ従前ヨリ所有シタル土地ハ北海道庁長官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ相続ニ因ルノ外之ヲ譲渡シ又ハ第一項第二及第三ニ掲ケタル物権ヲ設定スルコトヲ得ス
第三条 第一条ニ依リ下付シタル土地ニシテ其ノ下付ノ年ヨリ起算シ十五箇年ヲ経ルモ尚開墾セサル部分ハ之ヲ没収ス
第四条 北海道旧土人ニシテ貧困ナル者ニハ農具及種子ヲ給スルコトヲ得
第五条 北海道旧土人ニシテ疾病ニ罹リ自費治療スルコト能ハサル者ニハ薬価ヲ給スルコトヲ得
第六条 北海道旧土人ニシテ疾病、不具、老衰又ハ幼少ノ為自活スルコト能ハサル者ハ従来ノ成規ニ依リ救助スルノ外仍之ヲ救助シ救助中死亡シタルトキハ埋葬料ヲ給スルコトヲ得
第七条 北海道旧土人ノ貧困ナル者ノ子弟ニシテ就学スル者ニハ授業料ヲ給スルコトヲ得
第八条 第四条乃至第七条ニ要スル費用ハ北海道旧土人共有財産ノ収益ヲ以テ之ニ充ツ若シ不足アルトキハ国庫ヨリ之ヲ支出ス
第九条 北海道旧土人ノ部落ヲ為シタル場所ニハ国庫ノ費用ヲ以テ小学校ヲ設クルコトヲ得
第十条 北海道庁長官ハ北海道旧土人共有財産ヲ管理スルコトヲ得
北海道庁長官ハ内務大臣ノ認可ヲ経テ共有者ノ利益ノ為ニ共有財産ノ処分ヲ為シ又必要ト認ムルトキハ其ノ分割ヲ拒ムコトヲ得
北海道庁長官ノ管理スル共有財産ハ北海道庁長官之ヲ指定ス
第十一条 北海道庁長官ハ北海道旧土人保護ニ関シテ警察令ヲ発シ之ニ二円以上二十五円以下ノ罰金若ハ十一日以上二十五日以下ノ禁錮ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
附 則
第十二条 此ノ法律ハ明治三十二年四月一日ヨリ施行ス
第十三条 此ノ法律ノ施行ニ関スル細則ハ内務大臣之ヲ定ム

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