温度のバリアフリー
車いすが使えるバリアフリー住宅を建てようと家づくりを開始して、いろいろと調べていく中で、バリアフリーにすべきは段差だけではないことに気づきました。
漠然と、寒くない家がいいな、とは思っていましたが、ヒートショックが社会問題になっていること、そのための対策として、家の中の温度差を少なくするべき、ということがわかりました。娘のためにも、私達家族のためにも、温度のバリアフリーの重要性を強く感じるようになりました。
ヒートショックとは、住宅内の温度差によって血圧が大きく変動することで起こる健康被害です。年齢を重ねると温度に対する感覚が鈍くなるので、高齢者では特に注意する必要があるといわれています。ヒートショックが原因で、意識障害や心筋梗塞、脳卒中を起こし、それが転倒や浴槽での溺水などにつながる可能性があります。ヒートショックが原因で亡くなる方は、年間約1万9000人にのぼるそうで、これは、交通事故による死亡数の約5倍とか。家の中の方が安全じゃないなんて衝撃的です。
また、普段仕事で多くの障害児と接していますが、子どもたちはこもり熱があり、体幹は温かい一方で、手先足先は冷えていることも多く、体温調節が難しい子が多いと感じます。娘も例外ではなく、夏暑い日も汗はほとんどかかず、体を触ると熱くなっていたり、冬の足先はレッグウォーマーをしていても爪が少し紫色になるくらい冷えていたりします。そういった特徴に加えて、娘は日常生活動作全般に介助が必要な重心児なので、入浴や更衣、移動などなにかと時間を要します。できるだけ体に負担のかからない温度差の少ない状況で日常生活が送れるようにしてあげたいと思いました。
そういったことで、家族みんなが安全に暮らせる「健康住宅」にすべく、家の断熱性を高めて温度のバリアフリーを図ることにしました。
そこで主に3つのことに取り組みました。
①窓の種類にこだわること
住宅で熱の流出率が一番高いのが窓です。ペアガラスで、リビングの大開口窓は、アルミ樹脂複合サッシ、他の窓は樹脂サッシにしました。リビングは天井高のサイズで樹脂サッシの規格がなかったので仕方がなかったのですが、大きい窓の場合、サッシの影響よりもガラスの影響の方を受けるので、これでよかったかなと思います。引き違い窓は気密性が下がるので、リビングは片面がFIX窓(開かない窓)になっている片引き戸、他はすべてすべり出し窓にしました。
②窓を必要最低限の大きさと数にすること
熱の流出を最小限にするために、大き過ぎる窓にせず、不要な箇所に窓をとらないようにすることで家の気密性を下げないようにしました。採光?眺望?換気?出入り?など、一つ一つの窓の目的を考えて明確にしていきました。その結果わが家では、トイレ、浴室には窓はつけませんでした。
③廊下をなくすこと
これは、玄関や浴室などを広くとる必要があったので必然的にそうなりました。廊下があることで廊下が空気を遮断し空間に温度差が生まれやすいので、なくしてよかったと思います。車いすが使える住まいということで採用した上吊り引き戸も、完全に遮断されず隙間があることで、リビングの空気が隙間から少しずつ流れて温度差を少なくしてくれているので効果的でした。
これらは建物そのものの断熱性を高めるために取り組んだことです。それ以外には、浴室暖房&脱衣所にエアコンを設置することで、温度変化の少ない家を目指しました。
九州なので、断熱材の追加やグレードアップはしませんでしたが、寒冷地ならばもっと検討していたかもしれません。
※バリアフリーにも、物理的バリアフリー、社会的、心理的などありますが、ここでのバリアフリーは物理的バリアフリーのみをさしています。