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どこで建てるか

家づくりをすると決めて、土地探しと並行して、ハウスメーカーや工務店の情報を集め始め、6社ほどは話を聞きに行くなどしました。ネットで検索しても、一般的なバリアフリーやユニバーサルデザインについて説明されているところは多いですが、障害児(者)の家づくりに詳しく、特化したハウスメーカーや工務店を、近くで見つけることはできませんでした。

バリアフリー住宅を専門とする工務店は、公的制度を利用したリフォームを主に手がけていることが多く、事前の申請や事後の報告など行政とのやり取りが必要なので、一般の工務店やハウスメーカーは手がけることが少なく、制度に精通した工務店が行っていることが多いと聞きます。集客は、行政や地域包括支援センターやケアマネージャー、施設などからの紹介によって行われていることが多いので、一般的なハウスメーカーや工務店であれば行っているネットからの集客に力を入れる必要がありません。そのため、実はそれなりに存在していたとしても、見つけることが難しかったり、見つけたとしても必要な情報が得にくくなってしまっているのだと思います。そして、見つけたとしても、新築工事や住宅の全面リフォームなどには対応できない工務店もあるとも聞きます。

どこで建てるか考え始めた当初は、私たちもバリアフリー住宅や車いすが使える住宅について調べ始めたばかりで、どういうことが必要になるのか、どういうところにお願いしたらいいのか、知識不足で、ハウスメーカーや工務店に話を聞きに行っても、具体的な質問やよい質問ができていなかったと今になって思います。

バリアフリーやユニバーサルデザインということばが一般化し、これらのことばを使用しているハウスメーカーも多いので、それなりの規模のハウスメーカーや工務店に依頼をしたら大丈夫と思いがちですが、実際はそこでいわれているバリアフリーやユニバーサルデザインだけではなく、必要なことがあることが今はわかります。しかし、バリアフリー住宅に特化しているかどうかだけでハウスメーカーや工務店を決められたかと考えるとそうではないし、そもそも家づくり自体が、調べないといけないことがたくさんあって難易度が高く、とにかく勉強が必要だということがわかりました。それに「障害児のための」ということが加わるとますます難易度が高くなり、しかも障害の内容や程度はそれぞれなので、その部分はそれを知っている私たちが知識を得ながら積極的に介入して家づくりをしていく必要があります。

わが家は、土地探しと並行してのハウスメーカー選びだったので、建築条件付きの土地がいい場所に見つかったということもあり、住友林業で建てることになりました。現実に家が建った今、その選択に後悔はなく、むしろ大満足しています。住友林業で建ててよかったと思う理由についてまとめました。

①自由度が高いこと(制約が少ないこと)

車いすが使えるバリアフリー住宅にするためには、建具や廊下の幅を大きくするなどの必要があります。ハウスメーカーによっては、尺モジュールの半マス単位でしか動かせなかったりするようですが、わが家は数cm単位で決めることができ、必要な箇所は広くとることができました。車いすの快適な使用のためには柱を少なくできたほうがいいですが、工法などの問題で広いリビングを作ろうとしても柱が必要になる場合があります。耐震強度を保ちつつ大空間を作れるところがいいなと思いました。性能、内装などハウスメーカーはそれぞれ強みや特徴があるので、それを知って、これがやりたい、ということでのハウスメーカー選びもありだと思います。

②モデルハウスや実例を見て気に入ったこと

大手ハウスメーカーだと、複数のモデルハウスで説明を受けながらじっくりと見学できたり、実例見学などで実際の家を見せていただく機会も多いです。内装などの雰囲気も体感することができ、どういう家が建つのかイメージがつきやすいです。私たちもでしたが家づくりをする人は、障害児のための家とはいえ、せっかく家づくりをするのであれば、障害児のためだけでなく、こんな家にしたい、こんな暮らしがしたい、と考えるはずです。私たちもモデルハウスや実際に建てられた方のお家をいくつかみせていただき、こんな家に住みたい、ここで建てたら素敵な家になりそう、と思いました。その感覚が、熱量を保ちながら家づくりを完走することのモチベーションにもつながります。

③大手の安心感

モデルハウスや資料などで、わかりやすく工法や構造、仕様を知ることができ、使われている部材が明確で一定水準の品質が確保できるということが魅力的でした。会社の規模が大きいことや、保障やメンテナンスなどのアフターサービスを専用の部門が担当し、なにかあれば速やかに対応してくれるということ、先々まで面倒を見てくれるという安心感もありました。

④家づくりの情報が得られやすい

大手ハウスメーカーは集客にもお金をかけているので、モデルハウスだけではなく、パンフレット等の資料が充実しています。また、SNSには、ハウスメーカーのハッシュタグを使った、家づくり経験者の投稿がたくさんあります。当然、地元の小さな工務店よりも大手の方が情報量としては多くなるので、わが家もさまざまな情報が得られました。どんなステップで家づくりが進んでいくのかが経験者の投稿を見ることで予測でき、打ち合わせに向けた準備がしやすかったり、何ができて何ができないのかがわかり(支店による差もありましたが)、仕様の検討がしやすかったりしました。

⑤寄り添ってくれる人

結局は人です、という話はよく聞きますが、わが家の場合は特に一般的な家づくりではないので、娘のための家づくりがしたいという私たちにどれだけ寄り添ってくれるか、が大切だったなと思います。特に玄関のつくりはハウスメーカーでもやったことがないような仕様をお願いすることになりました。私たちが叶えたいことがどうすれば叶えられるか一生懸命考えてくださり、何度も打ち合わせを重ね、その中で、娘ファーストでありつつもそれだけの家づくりにならないように、私たちが大切にしたい部分も汲み取ってくださっていたと思います。

一般的には、大手ハウスメーカーは工務店に比べて、自由な設計やデザインができない、といわれていますが、今回娘のためのバリアフリー住宅を建てるうえで、何かができなくて困る、というようなことはありませんでした。よい工務店で建てることも可能だったと思うし、絶対に大手ハウスメーカーで建てたいと思っていたわけではありません。ただ、そこに決めるための判断材料としての情報が得やすかったか得にくかったかという違いはあるように思います。

結局のところ、一般的な住宅もバリアフリー住宅も、どこで建てるかよりも、施主力を高めることが一番大事、という結論になってしまいます。自分たちが叶えたい暮らしを明確にすること、そのための選択や決定ができるように知識を身につけること、それらをハウスメーカー(設計士)などのプロに正確に伝えられるようになることが必要だと感じました。

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