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【実話】魂を抜かれる

今年の4月
私の身に起きた出来事です。


寝付きが悪い私は、
ベッドに入ってからもうだうだ
漫画を読んだりスマホを触ってしまいます。


豆電球では暗すぎて手元が見えないので
ベッド脇に机を寄せてライトを置いていました。


この子はとても便利なライトで
上部にある窪みに電源スイッチがあり
手を触れるだけで点灯することが出来ます。


その日、いつものように仕事から
帰った私は、疲れた体をベッドに預けて
しばらく動画を見た後にライトを消して
眠りにつきました。


夢を見ないぐらいぐっすり
眠っていたはずなのですが
目を閉じてからそう経たないうちに
意識が少しずつ覚醒していきました。

目を閉じていても、外の静けさや
肌の感覚で今が夜中であることが分かります。


明日も早いのに目が覚めちゃって嫌だなぁ
そんなことを思って体を起こそうとした
時です。


体がぴくりとも動かないことに気がつきました。
いわゆる、金縛りにあったのです。


瞼も動かせず、どうしたものか
思っていると、右足に違和感を覚えました。




右側は窓際なのですが、
そちらの方に向かってぐーっと
右足を引っ張られている
そんな感覚があったのです。


足を掴まれているとか
そんなことはないのですが、
確実に右下に向かって引っ張られていて
体が落ちてしまうのではないかと
焦りました。


次第にその力が強くなっていき
私はあることに気がつきました。


引っ張られている感覚が確かに
あるというのに
体は微動だにしておらず
布団などがずれれば聞こえるはずの
布の擦れるような音がしないのです。


おかしい、何が起きているんだろうと
疑問に思ったのもつかの間。

ちょうどへその辺りからすううと
力が抜けていき、
上半身と下半身が真っ二つに分かれたような
感覚に襲われると同時に
先程よりも強く速い力で引っ張られました。


うまく言うのが難しいのですが
体の中に詰まっているゼリー状の何かを
ずるずると引きずり出されているような
感じです。
とにかく言えるのは、
いままで経験したことがない、
気持ちの悪い感覚だということ。


腹、腰、太もも…と
何かが引き抜かれていった部分は
先程まで感じていた
服や布団に触れる感触や、温度といったものを
一切感じなくなり、
代わりに
ただ、肉の塊の重みだけしか感じられず、
自分の体でありながら自分の物でなくなっていくようでした。

下半身から感覚が失われていくのと
同じタイミングで、
今度は右腕の方から同じように上半身を
引き抜かれていき、
ふくらはぎと胸から上以外の部位は
何も感じなくなってしまっていました。


その時私は、
あ、これは体が引っ張られているんじゃない
魂が抜かれていっているんだ
となぜか思い
途端にこのまま抜かれると不味いと感じて
必死に体を動かそうとしました。


が、足も腕もぴくりとも動かず
何とか動いた口からは
「あー」とか「うぅ」とか
情けない声が出るばかり。

ただ、声を出したお陰か
顔を動かせるようになって
瞼をなんとか薄く開きますと
目の前に真っ青な禍々しい光が。

それらはノイズのように波打ちながら
私の体を覆い尽くしていたのです。


きっとこれが悪さをしているんだと
思った私は机の上のライトをつけて
追い払うことを考え
必死に手を伸ばしました。


もう既に魂が抜かれていった右手は
鉛のようになってしまって動かせなく
なっていたので
左手をなんとか捻りながら左脇腹に
力を込めつつ体を起こし
ライトを視界の端にとらえました。

あと少し、早くつけないと
祈るような気持ちで手を伸ばしていくと
同時に瞼があがっていきました。


開けた視野のおかげでライトの正確な位置が
分かり、手をのせることが出来ました。


もうあとは窪みに触れてライトの
電源をいれるだけです。

ほっとして指先を動かしていると
視界の端に白いもやがゆらめいたのが
見えました。


安心しきった私は、ただ、本能のままに
そちらの方へ顔を向けてしまいました。


そして、言葉を失ったのです。




ライトの真隣に男か女かも分からない、
真っ白くて
大きな顔が浮かんでいて
それはライトが着くのと同時に
ふっと消えました。



しばらく心臓はバクバクと早鐘を打っていて
放心していましたが、
私はすぐに足を動かしたり
全身を擦るように触りました。


動く、触れる、温度も感じている…
それが分かってようやく力が抜けて
その日の夜は寒かったというのに
冷や汗があふれました。


結局その後は一睡も出来ずに
朝をむかえました。


あのまま魂が抜かれたら
どうなっていたのだろう

そして、

あの光と顔は一体何者だったんだろう

未だに原因は分からずじまいです。



皆様もどうか、
寝ているときに抜かれないように
お気をつけて。


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