【ミャンマー】 蝋燭の灯るオアシス
女は黙ったまま檳榔を包む。辺りは燻んだ朱色の街灯に照らされていたが、その店は殆ど暗闇に溶け込んでいる様に見えた。時折、菓子を目当てに近所の子供がやって来る。水や煙草が売れていく。花飾りを纏った小さな木彫りの座禅像。女はどこか安らいだ顔をしていた。風に揺らめく小さな蝋燭。車のヘッドライトが刻み煙草の缶を照らした。女の嫌がる顔を見たくないから水を買ったらそのまま立ち去ろうかと考えた。だが今回は撮らなければいけないとも思う。これまでこういった店を数え切れない程通り過ぎて来た。声を掛けるか躊躇い店先で一人立ち尽くす。女は穏やかな顔で檳榔を包み続けた。(shelter notebook 付録:習作の記憶より)