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【映画感想「えんとつ町のプペル」】
誰から何と言われようが自分を信じる。
信じ続けていれば奇跡は起こる。
私はこんなメッセージを受け取りました。
リアルタイム(2020年)で鑑賞した方には、もっと特別なものに思えたのではないでしょうか。
コロナ禍で日本は大変な時でした。
そんな中で熱いメッセージを乗せた映画を日本中に届けようなんて、作り手側は並大抵の事ではなかっただろうなと思います。
この映画は見るもの全てが新鮮で、たくさんのテーマがあったように思います。
親子の絆、自分を信じる事、他人を信じる事、希望を持ち続ける事、希望を持ち続けるために自分は何をするのか。
映画の前半はよく分からなかったのですが、後半で一つずつ伏線回収されていくので全ての場面が大切でした。
一つずつ伏線回収されるたびに物語が盛り上がり、まるで何度も笑わせてくれる楽しい漫才を見ているようです。
作り込まれたキャラクターたちや素晴らしい物語、絵本の中を散歩しているような映像美、全てが素敵でした。
でも見終わってみて結局心が一番揺さぶられたのは、ルビッチ親子の何気ない親子の日常でした。
ルビッチが足を震わせながらハシゴを登る時、お父さんが後ろから応援するシーンや、お母さんが車椅子から立ち上がって子供の挑戦を応援するシーンなどです。
あんな親になりたいな〜と思ったのと同時に、いちいち細かい事気にしなくていいよね、と思わせてくれました。
他にも見る側を飽きさせない仕掛けがたくさんありました。
振り返ってみると、物語はとても分かりやすいです。
煙の上に綺麗な星があることを自分の子供と町のみんなに伝え続けた男性と、男性の魂を受け継いだ少年とゴミ人間プペルの成長と冒険の物語です。
町の中では暗黙のルールが存在します。
・上を見上げない
・夢なんて見てはいけない
・真実を探ってはいけない
そんな暗い雰囲気の中で、一人の男性が皆に「希望を失わない事」を伝えるために紙芝居をするところから始まります。
一人一人のキャラクターも魅力的でどこか昭和っぽい懐かしさがあり、特に主人公ルビッチと友達三人は幼い頃に見ていた漫画を思い出します。
心優しい男の子にいじめっ子、ケンカの仲裁に入る女の子、いじめっ子の
子分みたいな男の子。
ルビッチと三人はもともと友達同士なんですが、途中で三人は「煙の上の星」を信じなくなります。
町のほとんどの人々が信じない「煙の上の星」を信じ続けるルビッチは友達からのけ者にされてしまいました。
特に三人の中のリーダー格のアントニオがルビッチに辛く当たるんですが、それにもちゃんと理由があるんです。
アントニオは「星を信じる事」を諦めてしまっただけで、どこかでルビッチのように信じたい気持ちがあるんです。
仲が良い者同士だから、出す答えがいつも同じとは限らないと心のどこかで
分かってはいるけど、ふと意見や答えが違った時に悲しくなってしまうこと
ってあります。
物語の中で一番印象的だったのは、主役の男の子ルビッチとルビッチの両親の関係性です。
お母さんは車椅子ですが、あまり口うるさく言わずにただ見守っています。
物語の終盤、ルビッチがようやく自分の目的を果たせるという時に、周りの人たちの声が聞こえてきて不安になるんですが、その瞬間にお母さんがルビッチにあなたは何も間違っていない、と諭します。
この場面にはとても感動しました。
「最後までやり切りなさい」
というような言い方ではなく120%肯定した言い方をしたお母さんが素敵でした。
お父さんも一見ハチャメチャやってるように見えるんですが、ルビッチと
一緒の時はお母さんと同じです。
危なかったらちゃんと手を差し伸べて、出来たらちゃんと褒めます。
お母さんが他人の前で堂々と旦那を褒める場面もあるんですよ。
現実ではなかなかないことですが、夫婦の繋がりみたいなものを感じた良い場面でした。
「えんとつ町」全体がなんとなく希望を失っている中で、この三人の親子の場面だけがキラキラ輝いて見えました。
最初はこの輝きが、ラストに近づくにつれ、だんだん広がっていくんです。
だんだん広がっていく様子も、息を飲むほどに美しく描かれます。
ずっと靄(もや)がかかっていた町に差し込んだ小さな光が、ゆっくり広がっていき、町の人々の心の中にも光が灯されていくようでした。
キャラクターを演じられた声優さんや俳優さんも本当に素晴らしく、映画を彩った歌手の皆さんも素敵で、まだまだ語り足りません。
見終わった後、この映画に出会えてラッキーだったと思いました。
どの映画も多くの人の思いから生み出され世に送り出されますが、この映画もまたたくさんの人たちの思いが込められた映画だったのだと知って、改めて見て良かったなと思います。
「えんとつ町のプペル」絵本版は『えんとつ町のプペル』公式サイトで無料で読むことが出来ます。
絵本も素敵なんで、もっともっと多くの方々に見ていただきたいと思いました。
長くなりましたが最後までお付き合いくださりありがとうございます。
良い一日をお過ごしください。