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美味しそうな映画【バベットの晩餐会】

20世紀のデンマークを代表する女流作家カレン・ブリクセンの同名小説。
映画化は、1987年製作/102分/G/デンマーク
監督は、ガブリエル・アクセル

時代は19世紀のデンマーク、重苦しい雲と海を背景にしたユトランドの片田舎が舞台の起伏も無く派手さも無い映画ですが、前回の【ショコラ】と共にお気に入りコレクションに加えた映画です。


【ストーリー】

美しい姉妹マチーネとフィリパは、牧師の父と清貧な生活をしていた。姉のマチーネには地元の若い士官ローレンスが、また妹のフィリパには休暇中の著名なフランス人バリトン歌手アシール・パパンが求愛します。
然し、姉妹は父に仕える道を選び、未婚の儘の人生を歩み、やがて年老いた父も他界します。

老境に差し掛かった姉妹のもとへ、アシール・パパンの手配でパリコミューンによって家族を失いフランスから亡命してきた女性バベットが彼の紹介状を持って訪ねて来ます。

姉妹はバベットに家政婦として働いて貰う事にしました。

そして14年の歳月は穏やかに流れ信者たちは年老いて、集会も昔からの不幸や嫉妬心による諍いの場となったことに心を痛めた姉妹は、父の生誕百周年の晩餐会を開くことで皆の心を一つにしようと思いつきます。

その様な時、祖国フランスの友人に購入を頼んでいた宝くじで一万フランが当たったバベットは其の一万フランを最も有効に使おうと考えました。

パリコミューン以前、パリで大人気だったレストラン「カフェ・アングレ」の女性シェフだったバベットの計画とは....

【バベットが用意した晩餐会のメニュー】

其れは一般的にもデンマークの寒村でもあり得ない豪華なものです。
果たして、美食に程遠い食生活に慣れている人達にとってどのように感じられたのか気になりますが、映画では最初は無表情を装っていた人達が散会の場面では笑顔に。

美味しい料理は、御腹も心も幸せになりますね。

「海亀のスープ」から始まり、
「キャビアのドミドフ風ブリニ添え」
「鶉のフォワグラ詰めパイ包み」
「チーズ盛合わせ」(画像無し)
「野菜サラダ」
デザート「クグロフ形のサヴァラン」
「フルーツ盛り合わせ(パイナップル、マンゴー、葡萄、イチジクなど)」


【19世後半の1万フランとは】

当時のレートを現在に換算すると3,800万円位だそうです。
何と、現代の一寸した新築家屋一軒分の価格。

革命から全てを失うと御金の価値など無に等しくなるのでしょうか。
全てを世話になった人への御礼として使い果たして寒村に留まる決心をしたバベットに賞賛を贈りたいですね。

【パリ・コミューンとは】

元々はフランス革命のさなか、1789年から1795年まで存在したパリ政府です。
其の後1871年3月、普仏戦争の講和に反対したパリ市民が蜂起して成立させた世界最初の労働者政権でパリに労働者による政権(パリ・コミューン)を樹立したもののブルジョワの支持を受けた臨時政府の軍隊によって攻撃され、激しい市街戦の結果、5月に崩壊しました。
フランス政府軍とパリ・コミューンとの間で1871年5月に壮絶な戦闘が行われた一週間を指す言葉です。

多分、バベットの家族は、その戦闘に巻き添えで災難に遭ったのではないかと想像します。
革命とは、戦争以上の群集心理により残虐な心情に成るようで、良し悪しの区別なく殺戮がなされます。
そのような諍を知らない年代には計りかねる現象かと思われます。

一寸一服、年代物のワインを試飲して! 美味しそうですね。ゴクリ

最後に、最も印象に残った場面は、
調理場の隅っこの窓際に☝腰掛けてウズラの羽をむしったり、ワインの栓を抜いたりしてバベットを手伝っている男性が居ります。

バベットは、手伝ってくれた御礼に晩餐会の料理の全ての試食をさせていました。
晩餐会で一番、美味しい思いをしたのはローレンスの御者を務めていた、
其の男性かも知れませんね。

美味しそうな映画、鑑賞しただけで幸せな気分になります。