雨宿り
・通り雨にあって雨宿りをしている。通り雨、雨宿り、どっちも好きな雰囲気をまとった言葉だ。
・雨が降り始めた時は走って帰ることしか考えていなかったけれど、よく考えたら雨宿りするチャンスだと思い、ゆっくり歩いた。
・今思い直せば、宿る場所を見つけるまでは走った方がいい。状況は何も変わっていないのだから。
・しかし歩いたおかげで気づいたこともある。雨の中歩く時、大抵は傘を持っているから足元で(本当に靴のすぐ隣の足元で)跳ねる水を見ることはない。だが傘を持っていなければ、靴のすぐそばで跳ねる水を見ることができる。アスファルトの地面だとかなりの高さまで跳ね返る。土にぶつかると思って降ってきた水滴は驚いているに違いない。だからこんなに高く飛び跳ねるのだ。
・少し雨足が弱くなってきた。それでも傘無しで歩くには厳しい。もう少し宿ろうか。
・とりあえず屋根があったから入ったけれど、ここは何の施設だろう。大きめの木材が左右の壁に立てかけられており、奥にはダイヤル式の南京錠が二つ掛かった門がある。木の匂いがして落ち着く場所だ。
・諦めて傘をささず歩いている人もちらほらいる。そろそろ出ようかな。
・少し離れたところに晴れ間が見える。やっぱりもう少し待とう。服も乾いてきたし、もう濡れずに帰りたい。
・門の中にも木材がぎっしり詰まっている。よく見ると木材に文字が書かれている。「プラスター用」と書かれているものが多い。
・そのものの用途がそれ自体に記されているのは面白い。自己紹介をしながら存在しているんだ。なんて素直な在り方だろう。
・だいぶ晴れ間が近づいてきた。そろそろ行きます。
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