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夜にドライブ

 新しいほうの学校の成績処理があって、1日をちょっとハラハラしながら終えて家に帰った日、夕方の家事を終えて、古いほうの学校がもうないから、久しぶりに明日のことは考えなくてもいい夜を楽しもうと、定位置に座った。何をしようかな~ ♪  と、ちょっとだけnoteを見ていた矢先、とある予備校生から電話が。
「電車が止まっとって、帰れんのやけど、どうしよう??」
「え?なんで?」
「そりゃあ、雨よ」
「え?雨降ってないけど?」
「そりゃあ、こっちはすごい雨なんよ」
と、慌てているらしく、”そりゃあ”のところににじみ出ているいらいら感。時計を見ると、夜8:10。
 世間一般では夜の8:10なんて、今から塾が始まるとかいう人さえ居るのかも知れないけど、わたしにとって、8:10は、もう夜中。
「迎えに来てくれん?」
(うわ~、しょうがないけど…辛い。)
 というわけで、急いで出発。

 波のように押し寄せたり、小降りになったりするおかしな雨の中、夜、往復1時間あまりのちょっと遠くの駅まで迎えに行った。新幹線の駅がある、このあたりでは大きい駅へ向かって。


 こんな真っ暗な道を運転するのは、何年ぶりだろう。雨もたくさん降っているから、車線の白い線が見えにくくなっている。ところどころ、大きな水溜まりになっている。そこに車が突入すると、ジャーーーー💦、という音を立てて、車のライトに照らされた水しぶきがシーツのようにはね上がって、ちょっとタイヤに絡まるような不安な感覚がする。大きな道を走っているから、前の車についていけばいいだけで、それほど危なくはなさそうなんだけど。

 この県はたぶん政治的な理由から、すごく道は立派。昔、隣の都会の県の大学生だった頃、とある理学部数学科のバイク好きの同級生が、「き◯◯(←わたしのこと)のところって、人口少ないくせに、道だけはめちゃくちゃいいよね。空港の前の道、バイクで走るのにちょうどいい。うらやましい。この前走りに行ったけど、車一台も走ってなかった。もったいない税金の使い方。😊😊」的なことを、その県の方言で言ってたっけ、と思い出した。
 あの県の有名かつ独特な方言でどんな言い方をするのか、もうすっかり忘れてしまったけど、そういうことを。

 あと、夜のドライブと言えば、若かりし頃、県の東側の学校に勤めていて、部活が忙しかったりいろいろして夏休みもあまり実家には帰らず、ただ、お盆の期間だけ帰省していたな~。お盆前の部活の最終日は、だいたいどこかの学校と終日練習試合というパターンだから、帰省するのはもう夜で、高速道路を西へ向かって運転していると、ちょうど中間地点あたりの海のほうで、赤や緑の花火が、ぱっ、ぱっ、と上がっては雫のように散っていくのが小さく見えて、不思議な物足りないような気持ちになったりしていたな~。

 とかいうなんてことない思い出が、ここに書き始めるときりないくらいに、引っ張っても引っ張っても切れずにつながっている葛の葉のつるのように、頭の中で連鎖していく。


 とか思っているうちに、数年前につながったこの自動車道から降りて、標識に従って、何度か右に曲がると、駅の周りの大きなホテル群の中に、茶色いとある予備校生の通う予備校の建物が見えてくる。それを行き過ぎて、新幹線側の駅のロータリーに入る……、
 と、背は高いのに年齢より子供っぽいひょろっとした見慣れたシルエットが。見つけやすい人😊。ウィンカーを出して、車を近づけ、止めると、気がついてドアを開けて、
「いや~、すごい雨よね?こんなに梅雨って降りよったっけ?温暖化しとるんかねえ??……」
と、興奮してもうしゃべりはじめながら、車に乗ってくる。
「さあ?なかなかのスリルだったよ😊」
と、わたし。
 帰り道は、わたしの心の中の思い出ではなく、とある予備校生の予備校友達のあれこれをラジオがわりに聞きながら、ゆっくり帰って参りました。


 封印されし昔のことを突然思い出すのは、たぶん、noteの副作用じゃないかと思う。去年までは、そんなこと思い出しもしなかったです。

 今日も雨で、午後からもっと降ると、テレビの天気予報が言っている。とある予備校生は予備校に行くのを諦めた様子。きっと今日もおしゃべりをたくさん聞く日になるんだろうな。


 

 

 

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