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素直科は素直科

 冬休み明け授業二日目。
 前日のクール科に続いて、わたしの今日の最初の時間は、素直科。

 久しぶりに会う素直科。去年のように、教室のドアをそろそろ~っと開けて入ると、「ちわっす!」「ちわっす!」が聞こえてきて、思わずにこにこしてしまう。あ~、変わらない少年たちがありがたい……。

 と思って、「気をつけ、休め、気をつけ、礼!」をして、顔を上げて、……いつもと同じように、一番前の席の、気になる4人組に目をやった。



 素直科では、ちょっと点数が足りなかった人たちが教卓の前、4つの席に座る、ということになっているらしく、彼らは春からずっとその4つの席をキープしている。
 最初、本人たちからその話を聞いたときは、え~、(今時ちょっと気の毒なんじゃない?)と思ったけど、本人たちがそれで納得しているなら、意外にこれはいいかも、と途中から思っている。
 わたしがプリントが足りなくて音読するのに困ったら、教卓前のだれかのをいっしょに見る。わたしが前回どこまで進んだか、分からなくなったら教卓前のだれかのノートを見せて貰う。あまり頼りすぎて嫌がられないように気をつければ、ときどき会話ができて仲良くなれるから、すごく声が掛けやすい。「③のプリント、もう出してたっけ??」とか、「あれ?教科書は?」とか、「今、そこじゃなくてここよ?」を、ごく自然に言えて、非難している感じにならずに、彼らを授業の世界に誘える。


 さて、真っ先に目をやった先の、向かって左側の、一番そわそわ少年の髪型が変わってなんだか、……大人になってる。しかも、身長もたぶん、わたしを越しちゃったよね?え~……。
 そのまま、目線を横向きにずらして、真ん中ふたりと、右側の眼鏡を掛けた細身のセンター分け少年まで、4人とも、明らかに少年を卒業しつつあって、そろそろ若者……。そのまま、教室全体に目を向けると、そういえば、いつもならここでガヤガヤが始まってるはずなのに、大人っぽくみんな口を閉じている。いかにも、素直科みたいな顔をして。あれ~?

 その後、「今日のお仕事です。」と配った4枚もあるプリント、1番目の少年すら「うわ~、めんどくさぁ」(※正直なだけで、非難ではありません。)と一言つぶやいただけで、黙ってやり遂げて、最後に、出来上がった課題を教卓に出しに来て、「先生、治りましたよ。」と足を指さした。年末に怪我をして松葉杖をついていたから。「おー😶!良かったね~😊😊」


 授業が終わって、職員室に戻り、出席簿を入れ替えて、次のフレンドリー科の出席簿を手に取る。出席黒板によれば、本日インフルエンザで2人、発熱で一人欠席か……、終わったら手を洗うべきですね。

 珍しく雪の積もった渡り廊下。つるっと滑らないように気をつけながら渡っていくと、さらに向こう側の棟へ続く渡り廊下に人影が見える。素直科4人組が雪を丸めている。つまり、雪合戦……。
 雪をぶつけられた4番目のセンター分け少年が、3人を追いかけて大きな雪の玉を持って校舎に入ってきた。3人は笑い声を立てながら教室へ逃げていく。
 4番目くんが雪を持ったまま教室に入ったので、「うわっ、それは教室が…」と思って立ち止まって廊下から見ていたら、すぐに雪を持って戻ってきた。渡り廊下からちゃんとばらばらに崩して降らせて捨てている。みんなに言われたのね~😊😊
 結局のところ、しつけのよい若者たち。さすが、素直科。

 

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