書きたいから、書くだけの 「弾きたいから、弾く話」
土曜日は、とある少女のピアノ教室。12月、ピアノフェスティバルが行われるので、とある少女も申し込みをしておりました。
まず、フェスティバルで弾く曲を選びました。先生から貸してもらった楽譜、いろんな曲が載っていて、どんな曲なのか、スマホで聞いてみて、こっちにしようか、それともこっちにしようか、と、楽しく、かつ、冷静に吟味して、とある少女は曲を、憧れの「子犬のワルツ」に決めました。
楽譜をもらって、右手の最後のところ、おたまじゃくしが五線譜の上から下までぎゅうぎゅうに連なっているところを、わたしに弾いて聞かせて、
どう? 出来てた?
なんて、ちょっと、威張って訊いてきたりして。
それから数日して、ピアノの先生がインフルエンザに罹られました。ピアノは1週間お休みです。その翌々週、さらに、わが家でも、とある若者を皮切りに、家族が次々にインフルエンザに罹りました。とある少女ももれなくインフルエンザになってしまい、またピアノはお休み。
さらに、次の週は学校行事と重なってピアノはお休み、になりそうだったのですが、時間を変えてもらって、15分だけ見てもらいました。でも、なかなかはかどりません。
やっと、次の週からピアノ再開。今はものすごくたどたどしく、ではありますが、何とか一曲を通して弾けなくなくもなくもない。
そして、今朝。
わたし:ピアノフェスティバルって、いつあるんだっけ?
とある少女:多分、12月27日とか、そのぐらい
わたし:えっ、そんな年末とかにあるんだったっけ?
(ふすまに貼ってある告知を見に行く)
わたし:……来週って、書いてあるけど?
とある少女:……え?え?確か、どっかにそう書いてあったと
思ってたけど……
わたし:……(年末にはふつう、やりそうにないし、
これは間に合わなさそう。)
とある少女:……
とある少女:……えぇぇ、絶対間に合うわけないじゃん。
わたし:うぅぅぅ……ん……
というわけで、今日出場辞退してきました。
ときどき抜けてる わたしたち……
こんなとき、わたしにできることと言えば、
「子犬のワルツ」、音の美しい会場のグランドピアノで
弾けたら良かったのになあ……。
とかは、決して、ちらりとも、思わないことぐらいだ。
それと、
とある少女の秘められたがっかりした気持ちを
決して誤魔化してあげようとか、紛らわせてあげようとか
しないことぐらいだ。
弾きたいから、弾くピアノなんだから。
会場で聞かせたいから、弾くピアノじゃないんだから。
「とある少女」は、「わたし」じゃないんだから。
とある少女の気持ちは、とある少女のものだから……。