![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/161466050/rectangle_large_type_2_09bedbf3b200ec9e4eeb13b602d04c07.png?width=1200)
好奇心
三階の社会科準備室に閉じこもって、少年たちの書いた、NHKドキュメンタリー『市民と核兵器 ウクライナ危機の中の対話』についての短い感想を読んで、スタンプをひたすら、読んではポン、読んではポン、と、押していました。すると、中庭から、カーン、……カカッ、……カーン、…… という音が。
何の音?と、立ち上がって廊下に出て、中庭を覗いてみると……。
お~、おもしろ~い。
今、古いほうの学校では文化祭が近づいてきていて、なかなか活気づいています。(まあ、いつも活気はあります。)
この学校は実業高校なので、文化祭のメインイベントはふつうと違って、中庭にその道の専門家の指導の下、自分たちでとある設備を建てて、あることをする(内容は内緒です😊)のですが、その作業を専門科の先生たちや生徒たちがしている様子が、わたしにはなぜか妙に興味深くて、毎年、興味津々になってしまいます。
まず、だんだん建てられていく設備を見るのが、おもしろい!
万一落ちても大丈夫なように(?)綱みたいなものを設備の骨組みから腰につなげて、先生たちや少年たちが、高いところに登って鉄の棒みたいなものを組み立てていく様子なんて、見ていてとてもおもしろくて、目が離せません。みんな、怖くないんだろうか??ここは3階なので、ここまでは届きませんが、てっぺんは2階から見た目線の高さにあるのに。
下を見下ろすと、真下辺りで、斧を振り上げて薪を割っているのが見えます。カーン……、はこれですね。真上からでは帽子と肩しか見えないので、誰が割っているのか分かりません。まだ慣れてないようで、なかなか割れないみたい。斧がはじき返されています。でも、あんなに重そうな斧を振り上げては振り下ろして、高校生って腰が痛くなったりしないのでしょうか。
と、思った辺りで、「あ、仕事、仕事!」と我に返って、戻ってスタンプをまた、読んではポン、読んではポン、と、押しておりました。
チャイムが鳴って、その時間が終わって、またチャイムが鳴って、次の時間が始まりました。
わたしは2時間続きの空き時間。今度は没頭して、新しいほうの学校の授業を考えていたら、あっという間に次の時間が近づいてきたので、切り上げて社会科準備室を出ました。
準備室の鍵を閉めていると、あれ、まだ、カーン……、が聞こえてる。覗いてみると、まだやっていました。おっ、さっきより、明らかに上手になっている。
え~、疲れないの??と思いながらしばらく見てから、階段を降りて、職員室に入る前に、つい、二階の職員室の前で足を止めて、窓から、さっきよりよく見える少年たちの作業を、また、見つめてしまいます。
一輪車に材料を乗せて、次々少年たちが運んで来たり、空にして戻って行ったり。楽しそうに声を掛け合ったり、先生が指示を出したり。よく働く少年、いまいち働きの悪い少年、授業でしか見ない少年たちの姿がまた、実に興味深い。(密かに、職員室でしか見ない先生方の様子も実に興味深い。)この辺とこの辺って、実は仲がいいんだな~、という人間関係のつながりも、意外でおもしろい。
薪割り少年たちは、新ワイルド科の少年3人。
一番上手に割れる某少年が、大きな円柱状の長さ50㎝ほどの木の輪切りを、大きな木の切り株の上に立てて、足を開いて正面に立ち、かっこよく斧を振りかざして勢いよく振り下ろします。そうやって割ったまだ太すぎる薪を他の二人がそれぞれの場所に持って行って、もっと細く割ります。
大柄な薪割り上手の少年、授業中は後ろのほうの席で、慎ましく、真面目にしている少年だけど、こんなパワーを持っているなんて、知らなかったな。
それを手伝っている中サイズの少年。「ピンクのチョークは見えません」とか「窓からの光が反射して黒板が見えないから、そこに立って(光を遮って)おいてください」とか、授業中注文の多い野球部の少年も、フットワークが軽くて働き者なんだな、とか。もう一人のちょっと長身で細めの野球部の少年も、がんばってはいるけど、わたしは人のことはぜんぜん言えないけどパワー不足だな、とか。
薪割り組は、ときどき息を切らして休みながらも、その辺にある薪を全部割ってしまった。すごい。
あんまりずっと見続けているので、一輪車の少年のひとりに見つけられてしまって、「あれ?見てますね!」のダンスを踊られてしまう。😊😊~
その時間の終わりのチャイムが鳴りました。
職員室に入って、わたしの机の上にある、次の時間の新しいプリント、返却するプリント、閻魔帳、教科書、ボールペン、タブレットを重ねて抱いて、入り口で出席簿を取って、廊下に出ると、また、新たな薪を割っています。他のよく分からない不思議な作業も、それぞれの場所で行われていて、教室へ行くまでの道すがら、おもしろくてチャイムの鳴る1分前まで、渡り廊下でまたちょっと止まって、今度は見つからないように柱の陰からのぞき見したりしたのでした。
学校中でこんなに見ているのは、おそらくわたしだけ。だれか、このおかしな好奇心にブレーキを付けてほしい。