もう一つの世界の物語、22 白うさぎ 1/5
白うさぎ 1/5
三咲(みさき)は四年三組、うさぎ当番。
いつもはにがてな月曜日も、うさぎ当番になってからはまちどおしくて、小学校につくと、まっすぐうさぎ小屋にとんでいった。
「おはよう。
きなこ、ふうこ、まる。
みんな、げんき?」
クラスで飼(か)っているうさぎ三匹、もってきたキャベツの葉っぱをほうりこむと、さっそくまるとふうこがかじりだした。
「あれっ、きなこがいない?」
巣の中も空っぽ。
「おかしいなあ?」
きょろきょろあたりをみまわしても、やっぱりいない。
奈美(なみ)が遅れてやってきた。
奈美も、うさぎ当番。
「三咲ちゃんおはよう。」
「きなこがいないの?」
奈美はきょとん。
「どうして、にげたの?」
二人でさがしまわるが、やっぱり見つからない。
遅(おく)れて、おなじクラスの健人(けんと)と光司(こうじ)もやってきた。
ふたりも、動物が好きで、朝がにがてなうさぎ当番。
「おはよう、もうそうじおわった?」
「おそい、きなこがいないの。」
三咲がおこっている。
「えっ、どうして、おれたちのせい?」
健人はあわてて、
「おれ、たべてないよ。」
三咲はあきれて、
「どうして、あんたがたべるのよ。」
「先生に、しらせようよ。」
奈美がいうと、
「じゃあ、おれ、いってくる。」
健人はこれいじょう三咲におこられないように、あわてて走っていった。
職員室にはいって、大きな声で担任の橋本(はしもと)先生をよぶと、うさぎ小屋までひっぱってきた。
「うーん、いないなあ。
だれか、たべたのかなあ?」
先生は冗談(じょうだん)のつもりで言ったのに、さっそく三咲ににらまれていた。
「ほら、先生もいったよ。」
健人は、手をたたいてよろこんでいる。
奈美が心配して、
「先生、どうしよう?」
「とりあえず、朝の職員会議で報告しとく。それと、朝のクラス会で、世話係からみんなに報告してくれるかな。」
「先生、警察(けいさつ)に言わなくていい?」
「一日だけまってみよう。学校で問題になってることがわかったら、返しにくるかもしれないし。」
先生にいわれ、四人はしぶしぶ教室にもどっていった。
次の日の朝、三咲は、またびっくり。
「きなこがもどってる!」
何事もなかったように、葉っぱをたべている。
遅れてやってきた、健人も、光司も、奈美もびっくり、
「うわー、きなこが葉っぱをたべてる。」
「よかった。どこにいってたんだ?」
健人は、うれしそうに橋本先生をよびにいった。
先生もうれしそうにウサギ小屋にやってきた。
「まっててよかったなあ。」
光司はふしぎそうに。
「鍵(かぎ)かかってんのに、先生どうおもう?」
「さあ、どうしてかなあ。きなこにきかなわからんなあ。」
ほんと、先生はのんびり屋。
放課後(ほうかご)、四人はウサギ小屋を掃除(そうじ)すると、
なんども鍵(かぎ)をたしかめて帰った。
しかし次の朝、また事件がおこった。
きなこがいない。
「えー、なんでー?」
「せっかくもどってきたのに。」
「鍵もちゃんとかけたのに。」
さがしまわっても、どこにもいない。
健人は、とぼとぼ歩いて職員室にいった。
「先生、またきなこがいなくなった。」
今にも泣きそう。
うさぎ小屋を見にきた先生も、しょんぼり。
「せっかく、もどってきたのに?
なんで???」
頭がこんがらがっている。
「先生、明日になったら、きなこもどってくるかなあ?」
「うーん、まってみるか?」
「うん。」
四人はがっかりして、教室にもどっていった。
次の朝、四人はそろって登校(とうこう)した。
おそるおそるウサギ小屋に近づくと、
「うわー、きなこがもどってる。」
「三匹ともいる?」
「きなこ、ふうこ、まるもいる。
えっ、もう一匹いる!」
一匹ふえている。
まるで手品。
「なんでー?」
「きなこがつれてきたの?」
「きっと、そうだよ。
こっそり会いにいって、それで、つれてきたんだ。」
「おまえ、やるなあ。」
健人が、よろこんでいた。
「でも、鍵かかってるのに、どうやって?」
「どこかに、『どこでもドアー』があるのかな?」
健人らしいこたえ。
でも、三咲はあきれて、
「あんたは、マンガの見すぎ。」
仲はいいけど、いつも三咲にやりこめられている。
健人は、また先生をよびにいった。
「うーん、たしかに一匹ふえてるなあ。
なんでかなあ???
きなこが、連(つ)れてきたのかなあ?」
「ほら、先生もいったよ。」
健人は、うれしそう。
橋本先生は、頭の上にはてなマークをいっぱいつけて、職員室にもどっていった。
四人の頭にも、大きなはてなマークが、ひとつついていた。
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