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もう一つの世界、25  なんか 妖怪,4/4

なんか 妖怪 4/4


 次の日の夕方、お父さんが、車で健斗を迎えにやってきました。
 今夜は泊まって、明日の朝かえります。
 さっそく、建斗がききました。
「花火は?」
「言われたとおりぎょうさん買ってきたけど、だれとするんや?
こんな山奥に、友だちがいてるんか?」
「みんな、もっと山奥にすんでる。」
 健斗は、お父さんが買ってきたお寿司を食べると、花火をもらって、さっさと飛び出していきました。
 おとうさんは、やっぱり首をかしげています。
「じっちゃん、まだこの山奥に村があるんか?」
「さあなあ、このへんの森は妖怪のすみかやからなあ、妖怪たちの村やったらあるかもしれんなあ?」
 とぼけて笑っています。

 健斗は、ざしきわらしと暗い夜道を歩き、山の上の開けた原っぱまでやってきました。妖怪たちははやくからあつまって、待ちくたびれています。
「花火持ってきたか?」
 さっそく、一つ目小僧が声をかけてきました。
「ああ、みんなのぶんもいっぱいあるで。」
 妖怪たちのまん中におくと、みんなすきな花火をえらびはじめます。
 やまんばが、健斗に声をかけました。
「健斗、 明日帰るのか、さみしくなるなあ。
 みんなが、さみしがっとるぞ。」
「うん、でもまた、来年くる。」
 健斗も さみしそう。
 そんな気持ちをふきとばそうと、かくしてもっていたねずみ花火に火をつけ、みんなの中にほうりなげました。
 シュルシュルスル パンパンパンパン
 ふいをつかれた妖怪たちは、とび上がってにげまわっています。
 健斗は、大きな声で、
「花火大会の はじまりや!」
 みんなは、思い思いに花火に火をつけはじめました。
 ワイワイ、キャッキャ、あちらこちらでかんせいがあがっています。
 花火大会は夜おそくまでつづきました。
 そしてさいごに、今年の夏をしめくくるように、大きな打ち上げ花火を夜空にむかって打ち上げました。
 みんな名残惜しそうに、消えていく花火を最後までみつめていました。
「建斗、約束やぞ。まってるから、来年もぜったいこいよ。
 こなかったら、建斗の家までむかえにいくぞ。」
 みんなしんけんです。
「妖怪がきたら、学校の友だちがびっくりするやろなあ。
 でも、ぜったいくるから楽しみにまっててや。」
 建斗は、せいいっぱいげんきにこたえました。
 夜空できらめく星たちは、やさしく建斗と妖怪たちをみまもっていました。

 次の日の朝、おとうさんは源じいにおれいを言っています。
 健斗は、ざしきわらしをさがします。
「来年も来るから、またあそぼな。」
 ざしきわらしは さみしそうにうなずきました。
 健斗が荷物をまとめていると、後ろからざしきわらしがなにか言いました。
「なんか ようかい?」
「おれ 妖怪。」
 ニッコリ笑ってうなずきました。
 二人の合言葉です。
 健斗がおとうさんの車にのりこむと、源じいが声をかけました。
「健斗、また来いよ。妖怪たちがまっとるでな。」
 源じいは、笑っています。
 健斗は大きくうなずくと、手をふりました。
 車は、ゆっくりと細い山道をくだっていきます、
「おとうさん、来年も来れるよね?」
「そんなにおもしろかったんか?」
「うん、遊ぶところがいっぱいあるんや。それに、友だちもいっぱいできた。」
 もうこわさはありません。
 健斗は、姿や形のちがう友だちが大好きです。
 山道を下っていくと、木の上から、岩の上から妖怪たちが 手をふっています。健斗も、大きく手をふりました。
 おとうさんには見えません。
「だれに手をふってるんや?」
「友だちや。」
「どこにも見えへんけどなあ。」
「妖怪やからなあ。」
「そうか 妖怪か。
 よかったなあ、妖怪の友だちができて。
 なんか ようかい。やな。」
 やっぱり 関西のダジャレです。

 振り返ると、源じいの家のうしろに、ゆたかな森がどこまでも広がっていました。
 健斗は、友だちが見えなくなっても、いつまでも手をふっていました。

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