[小説]能登の夏-辛いから、頑張る!-③
ノトーの友達、ノロシーは、珠洲に住むキリコ師。地震と津波で、キリコが流されて、残骸だけが残る町にいる。この地区のキリコは、きれいなことで有名だった。
ノロシーは、保管庫の中を見て、何も言えず、ただただ後退りしながら、また覗きを繰り返す。
「キリコが…」
と言いながらも、次のキリコのための材料を準備する。悲しみと寂しさと不安。これが、期待に変わるのは、まだ後だった。保管庫の中の無惨な状態を見ると、涙がポタポタと落ちてしまう。
「しゃーないんだけど、あぁ…」
「力が…」
保管庫自体が海の近くにあるため、揺れた時にキリコが斜めになって、その後に、津波でそのまま流されてきたようだ。
ノロシーは、キリコ作りの材料を準備しながら、
「さ、やるか」
と組み上げ作業を始めた。