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【ホタテラーメンに成りたかった僕】②
【ホタテラーメンに成りたかった僕】②
トラック運転手のお兄ちゃんに乗せられ僕は富山県まで来た。
「ふ〜長かったな。ヨシ着いたから荷物降ろすんでお前も手伝ってくれよな。なあに心配すんなその代わり富山ブラック奢ってやっから」
「あ、有難うございます!」
そう言われたら俄然張り切るしかない。トラックの扉を開けるとそこにはダンボール箱が少なくとも百箱は入っていた。
「お兄ちゃんこの荷物って何ですか」
「ああ、これかこれは中国からのシナチクだ」
「へ〜あのシナチクがこんなに大量に」
「日本じゃ殆どシナチク作ってないからな。ここで降ろして後はメーカーだったりチェーン店が引き取りにくっから」
「へ〜そうなんだ」
僕はあんなに仲良しのシナチクがこうやって運ばれて来るのを初めて知った。
「さあ、チャチャッと降ろして早く富山ブラック食いに行くぞ。開店迄に行かないと行列に並ぶようになっから」
「は、はい」
僕は楽しみでしょうがなくなって来た。張り切って荷物を降ろそう。よっこらしょっと。あれ大きさの割には随分と軽いな。
「意外に軽いんすね」
「そうだろ。乾燥してあっから」
「乾燥??」
「ああそうだ。乾燥した状態で輸入されて来るんだ。それをラーメン屋で水で戻して使うんだ。業界の常識だぞそんなの」
し、知らなかった。僕は今迄何を見てきたんだ。あのシナチクが中国から長い旅路の果てにやって来てしかも乾燥されて水で戻されていたなんて。
お店に帰ったらシナチクの頭を撫でてあげよう。良くぞ日本に来てくれたと。
僕はへとへとでも、お兄ちゃんは額に汗し黙々と頑張って荷物を降ろしている。
ああ、こうやって陰で頑張って労働してくれる人がいるからシナチクも仲間入り出来るんだとしみじみと思う。
「ふう。よし。これで最後だ。お前も頑張ったじゃねえか。さあ、富山ブラック食いに行くぞ」
「はい」
僕は褒められてとても嬉しかった。
そりゃたまにはお客さんで美味しかったと言ってくれる人もいるが、大概はおばあさんで、お世辞だとわかっているからそんなに嬉しくはない。でも今回の様にそんなお世辞は無く単に自分の頑張りを褒められるととても嬉しかった。
トラックは再びエンジンを吹かし次の目的地のラーメン屋へ向かった。
つづく