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【詩】待雪草

凍雲いてぐもは広がるだけ広がって
いつも思わせぶり
私は、また待ちぼうけ

この街の住人は寒さにめっぽう弱い
慣れない雪が降ると
街から一気に人が減り
雪など積もった日には
街から人が消える

そして静寂につつまれた街は
元々住人などいなかったような顔をする
これが本来の姿だと言わんばかりに
少し嫌味たらしく

「今度この街に雪が積もったら心中しない?」
そんな突飛な提案をした彼女は
冬でもない
夏の雨の日に
雪の如く
舞い落ちた

私はこの街に雪が積もるのを
ずっと待ち焦がれている
だから授業はただの空想の時間で
クラスメイトはただの動物
あの娘がいない生活はただの余生

夢で再会する
花を渡される
名前を聞く
待雪草スノードロップ
彼女がそう答える

落ちるような感覚で
目を覚まし
窓の外を見ると
誰も住んでいない
夜の街が
シンシンと
白に染まっていた

街に誰かが生まれる前にと
夜を駆ける
古い給水塔のもとで
雫が落ちた
白に映える朱色が鮮やかに。
やがて街にあがった産声は
悲鳴のようで























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