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②演目選び -中国成渝国際演劇祭参加の記録-
今回は「あなた、とりあえず人集めて作品作って来て」という状態だったので、まずはどんな演目が良いのか探るところからはじめた。
まず頭によぎったこと。
中国には検閲がある。
昨年SPACとして参加した演劇祭では、ドイツのカンパニーだったか男性の上半身裸のポスターが途中で差し替えられた。街中に上裸のおっさんいっぱいいるのにね。
ただ、コーディネーター経由で演劇祭側から聞いたのは、今回行く成都は中国の中でも割とリベラルな都市らしく、割と表現の自由があるとのこと。調べてみると確かに成都のある四川省(四川省の成都)はLGBTQが多く集まる地方でもあるそう。
じゃあこの面では割と何の作品でも良さそう。
ただ、もう1ヶ月半しかない。
今まで作った作品の中から選ぼうと思った。
それは小道具や大道具や衣裳が揃っているからという事ではなく、稽古の時間も考えると自分が作品分析をする時間がないという理由が一番。ただ、作品のプランはあるけれどまだ上演できていない作品もある。
次は人数の問題。
演劇祭側から飛行機代を出せるのはキャスト・スタッフ合わせて10名だとコーディネーターから聞いた。
僕、制作、照明、音響、舞台監督、残るは五人か。
この時点で「紙風船」か「人形の家」か「トゥーランドット」を持っていけるなと思った。
最後のトゥーランドットは未上演の新作で、あとは昨年上演した作品。
紙風船は、昨年一緒に作った方が9月から別作品への出演があることを知っていたことと、日本のオリジナル作品でストーリーが共有しずらく、これといった表立った劇的さもない為、劇的を求める中国の観客には面白がって貰えないのではないかと思い、候補からまず最初に外した。
「人形の家」か「トゥーランドット」か。
前者は会話劇で後者は自分の場合はオペラの楽曲を再構成して、セリフも入れて、というダンス劇。真逆の2作品。
どちらが観客の趣味趣向にあうだろうかと考えた。
それを考える材料は一つしか思いつかなかった。演劇祭に参加する他の作品を運営から教えてもらった。
シェイクスピア、ある。ギリシャ悲劇、ある。他にはオネーギンやヨンフォッセ、白雪姫、勿論オリジナル作品も。
ヨン・フォッセの作品はあるものの、傾向として、会話劇が多いように感じた。
会話劇を好む観客or演劇祭なのだろうな、と判断した。そしてリベラルな都市ということで、もしかしたら様々な社会問題について演劇を通して考えるのが好きな観客が多いのでは無いかと。
中国はとても広い。
例えば北京では会話劇は好まれるけれどいまだにミュージカルは受け入れられないけれど、上海はその逆、とか色々毛色がある。ただ、今回行く成都はあまりその点に関しての情報が得られなかったため、演劇祭のラインナップから想像してみた。
じゃあ「人形の家」にしよう。決まり!!
続く→次回 「人形の家」再演をどうするか
ちなみに。
先ほど出てきた「演劇祭側」というのは今回の演劇祭のフェスティバルディレクターをつとめている呂さんという方。
中央戯劇学院(中国最高峰の演劇大学)の舞台美術の教授らしい。
フェスティバルディレクターというのは普通プロデューサーを専門にやっている人か演出家が多いと思うのだけれど、どちらにも当てはまらない。
そしてフェスティバルというのは通常「色」があって、その色というのはそのディレクターが今まで築いてきた関係性の中からこれぞという演目を招聘する。
演劇祭なんてだいたいどこもそんな条件はよくないし、演劇界は世界中どこまで行っても(ブロードウェイでさえ)結局は信頼関係だからそういうパターンが多い気がする。ただ、演目の雑多さに、どうやって集めたのだろうと気になったのが正直な感想だった。