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英語を探せ#41-「ここで働かせてください」千と千尋

 日本テレビで「千と千尋の神隠し(2001年公開)」を初めて見ました。宮崎監督が、仕事仲間の10歳の娘さんへのメッセージを込めて創ったそうです。写真は香川県の金毘羅さん参道の老舗旅館 敷島館です。なお英語版タイトルは"Spirited Away"です。
 10歳の千尋は両親の転勤に伴って車で移動していた時に、ふと立ち寄った廃墟から、異界に迷いこんでしまうのです。その異界では八百万の神が骨休めにくる油屋という温泉旅館があるのです。そこで千尋は働き口を見つけ、大冒険をして、もとの世界へ帰るのです。
 正体不明の若い男ハクが千尋に、釜爺に会うように言います。「ここで働かせてください」と言えというのです。前半の一番の見どころかと思います。ここから千尋は、10歳の頼りない少女から、たくましく変わっていきます。この言葉は映画で、千尋が変化し成長する象徴的言葉だと思いました。
「ここで働かせてください、というんだ。仕事を持たない者は、湯婆婆に動物に変えられてしまう」“Tell him you want to work here. If you don’t get a job, Yubaba will turn you into an animal.”
「ここで働かせてください」“Could you give me a job please?”千尋は釜爺に丁寧に頼みます。釜爺は湯婆婆に頼めと言います。
 湯婆婆に千尋は何度も頼みます。日本語だと「ここで働かせてください」と同じ言葉で、声の出し方ほぼ同じで平坦です。声優の柊 瑠美(ひいらぎ るみ)さんです。10歳の千尋はなぜ必要かわからないが言っている、という感じがでて、いい演技だと思いました。一方、英語だと全部言い方違います。
“Excuse me, I was wondering if you could give me a job?
“Please! Can’t you give me a job?
“Please, I want you to give me a job, please!
I just want to work, please”.
I’m not leaving till you give me a job!
 上から下へ、だんだん言い方がきつく必死になってきます。英語だと同じ言葉を同じ調子で繰り返すのは単調で退屈、と判断されてよくないのです。日本語でも少しは変えますよね。英語は違う表現です。この6つの言葉は、頼み方の英語表現のよい見本です。
 さらに米国版には、日本語にない以下の会話が追加されたそうです。米国人からすると、日本語版での、無言の余白では物足りない、結論が欲しい、千尋が成長したことを確認したいということかと思いました。
「新しい家で新しい学校か、ちょっと怖いかも」“A new home and new school ? It is a bit scary.” と父が言い、冒険でたくましく成長した千尋が答えます。
「私、なんとかするよ」“I think I can handle it.”
なるほどその成長を、観客皆が実感できて、物語がわかりやすくなります。でも日本版も米国版も日本が世界に誇れる名作です。

参考:wikipedia 「千と千尋の神隠し」ttps://ja.wikipedia.org/wiki/千と千尋の神隠し
MoviePediaから。ttps://movies.fandom.com/wiki/Spirited_Away/Transcript

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