ヴェネツィアングラスの島:ムラーノ
数ある離島の一つ:ムラーノ島
「ヴェネツィアングラス」は、 ムラーノ島産の工芸品です。ヴェルサイユ宮殿の有名な「鏡の間」のシャンデリアも、ムラーノ島の職人達が手がけたものでした。
今では、世界中に名高い「ヴェネツィアングラス」は、ヴェネツィア本島の北に位置する、人口6千人ほどの小さな島が産み出すガラス工芸品で、千年以上の歴史と技術の集約と言えます。
ヴェネツィアに、ガラス工芸の技術が入ったのは10世紀頃で、当時交易で関係の深かった、ビザンティンより材料だけでなく職人も呼び寄せて、定着、発展させていきました。
ムラーノ島が、ガラスの島となったのは、1291年頃で、それまで本島にあったガラス工房を全て、ムラーノ島に移したためです。移動の第一の理由として、人口密度の高いヴェネツィア本島では、常に火災の危険が高かったこと。もう一つは、ガラス職人の高い技術を、外国へ漏らさないように規制する政策がとられたためでもありました。
こうして、工房同士のライバル意識と切磋琢磨により、繊細で華麗なガラス工芸へと高めてゆき、ムラーノのシャンデリアやグラスセットなどを持つことが、ヨーロッパ王室や貴族のステイタスシンボルにまでなったのです。ヴェネツィア共和国が衰退し始めた17、18世紀も、主要な経済基盤として国を支え続けたのでした。
ヴェネツィアングラスは、その色彩の鮮やかさ、薄さ、細やかさの他に、レース模様や編み目模様なども特徴の一つです。後に繁栄したボヘミアングラスも、このムラーノの職人が政策を「裏切って」彼の地に移住し広めた、と言われています。