成功者の言葉はあまり参考にならない
日経新聞を読むようになってから40年近くが経ちます。若い頃は通勤電車の中で吊り輪に掴まりながら真面目に読んでいました。最近はiPadで読むので、あの頃の苦労はありませんが、替わりに隅々まで目を通すこともなくなりました。
そんな不真面目な読者ですが、ずっと読み続けているのが、最終面にある「私の履歴書」です。毎月1ヶ月にわたり、自分の半生を綴るのですが、もちろん選ばれるのは成功者です。毎回面白いかと言えば、実はつまらない回の方が多い。
近現代史として読むなら面白いけど、成功の秘訣が、「銀の匙を咥えて生まれた」(恵まれた家に生まれた)ケースが多いし、一流企業の経営者がほとんどなので、超一流の学歴の人ばかり。普通の家に生まれて、普通の経歴の人間が真似しようとも思わないエピソード山盛りです。
でも、もちろんとても面白い回もあります。近年で出色だったのが、ニトリの会長の似鳥昭雄氏の回でした。
幼い頃は親の闇屋の手伝い、大学はカンニングで入り、大学時代は取り立て屋。入社した会社では仕事をさぼりパチンコ。ちょっと信じられないようなエピソードのオンパレード。そして成功は運が8割と公言。まあ、残りの2割は自分で切り開いたものなので、それでも大したものですが。
この回は、「似鳥昭雄 運は創るもの 私の履歴書」として日本経済新聞出版社から書籍化されていますので、興味のある方は是非ご一読を。
面白いということと、参考になるということも違っていて、最も面白かったこの回も、決して参考にはなりません。
ただ、こうした成功者にして、運が8割というのは、傾聴に値する真実だと思います。
考えてみれば、松岡功氏(松岡修造氏の父)が東宝の11代目の社長に就任できたのは、小林一三(阪急東宝グループの創業者)の一族に生まれたという運によるものです。彼がごく普通の家庭の息子だったら、決してそうはなっていないはず。こんな明らかな例を引くまでもなく、成功に運は不可欠と言っていいでしょう。
松岡功氏の回は、近現代史としては面白かったものの、私にとって参考になる部分は一切ありませんでした。もちろん、色々な局面で、メンタルの強さを感じることもありますが、たいしてメンタルの強くない身としては、「メンタルが強ければ逆境も乗り越えられる」というたいして面白くない結論に至るばかりです。
ここまで読んで、では、成功のためには一切の努力は無駄なのか、と思ったかもしれませんが、それは違います。
あなたの運はどこにころがっているかわからない。100社に落ちても、101社目にその運があるかもしれない。よく言われることですが、成功の秘訣は、成功するまでやめないこと。
就活で落ち続けると、もう自分が働く場所は日本のどこにもないのか、と絶望することもあるでしょう。でも、そんなわけないです。
次の会社を探して、応募してみましょう。ここでやめても、何も起こりません。