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『銀河ヒッチハイクガイド』の思い出③

 まだまだ続けます。

 英国では、サンドイッチはぱっとしないわびしいい食物で、あらゆる面で食うに堪えないものと決まっている。そうでないサンドイッチを作るのは罪深いことであり、そんなことをするのは外国人だけなのである。
「ぱさぱさでなくてはいけない」という義務感が、集合的国民意識のどこかに埋もれている。「ゴムみたいでなくてはいけない。新鮮さを保ちたかったら、週に一度洗うこと」
 土曜日の昼どきにパブでサンドイッチを食べることによって、英国人は国民として犯した罪の償いをしている。どういう罪なのかまったくわからないし、知りたいとも思っていない。みずからの罪を知りたいと思う人間はいないものだ。しかし、それがどんな罪であろうと、それはサンドイッチをむりやり食べることによってじゅうぶんに償われているのである。

『さようなら魚をくれてありがとう』より

 英国愛あふれるサンドイッチ描写。

「科学者は徹頭徹尾子供のようでなくてはならない。わたしが子供のころの愛称を名乗っているのは、それを肝に銘じるためなんだ。なにかが見えたら、見えたと言わなくてはならない。たとえそれが、そこに見えるはずだと思っているものでなかったとしてもね。まず見て、次に考えて、それから検証する。つねに見ることから始めるんだ。そうでないと、そこにあると思っていたものしか見えなくなる。たいていの科学者はそのことを忘れている。その証拠をあとで見せてあげよう。というわけで、わたしが“正気のウォンコ”と名乗っているのは、そうすれば人からばかだと思われるからなんだ。そう思われていれば、なにかを見たら平気でなにかを見たと言えるからね」

『さようなら魚をくれてありがとう』より

 なぜダグラス・アダムスが科学者に人気があるのかがわかる一説。ほんとにそうだよなあ。

 アーサーは手近のパネルに大きな赤いボタンがついているのに気がついた。それがいかにも押してくださいと言っているようなので、なんの気なしに押してみた。パネルがぱっと明るくなり、「このボタンを二度と押さないでください」と表示された。アーサーは身震いした。

『銀河ヒッチハイクガイド』より

くだらねえ(笑)。

「その船にも嫌われました」マーヴィンは大破した宇宙船をさしてしょんぼりと言った。「わたしが話しかけたので、わたしを嫌ったんです」
「話しかけた?」フォードが大声で言った。「どういう意味だ。宇宙船に話しかけたって」
「簡単なことですよ。退屈で気が滅入ってしかたがなかったので、船のコンピュータの外部接続に自分で自分自身を接続したんです。それでずいぶん長いこと話をして、わたしの宇宙観を説明したんです」
「そしたら?」フォードが先を促す。
「自殺してしまいました」マーヴィンは言って、〈黄金の心〉号にひっそりと戻っていった。

『銀河ヒッチハイクガイド』より

 惑星規模の頭脳を持ち、あらゆる宇宙の理を理解してしまったがために鬱になったロボット、マーヴィン。かわいいよ、マーヴィン。ちなみに僕のアカウントに使っているのは彼です。だいすきだから。

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