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『銀河ヒッチハイクガイド』の思い出①

 何度もくりかえし読み、もはや聖書扱いしているダグラス・アダムスのバカSFの金字塔『銀河ヒッチハイクガイド』シリーズ。今回は記憶に残る秀逸なギャグたちを一部紹介したいと思います。

 この地球という惑星にはひとつ問題がある、というか、あった。そこに住む人間のほとんどが、たいていいつでも不幸せだということだ。多くの解決法が提案されたが、そのほとんどはおおむね小さな緑の紙切れの移動に関係していた。これはおかしなことだ。というのも、だいたいにおいて、不幸せだったのはその小さな緑の紙切れではなかったからである。
『銀河ヒッチハイクガイド』より

 記念すべき一作目『銀河ヒッチハイクガイド』の冒頭。これは一部分だけど、冒頭は全文章がため息が出るほど素晴らしいのです。

 スラーティバートファーストは空間についてボーイと激しい口論をし、空間とはこういうものだというまったくの主体的概念から生まれた空間に自ら入ってどこかへ行ってしまった。
『宇宙クリケット大戦争』より

 これぞダグラス・アダムスっていう文章。「良い文章は情景が目に浮かぶ」とかなんだか言っている人に「それダグラス・アダムスにも同じこと言えるの?」と言いたくなる。

 もうひとつ、この船で奇妙なのは“他人ごとフィールド”の作用だった。いまのふたりには船の姿をはっきりと見ることができるが、これはひとえにそこに船があると知っているからだ。しかし、ほかの人に見えていないのはまったく明らかだった。これは実際にその船が不可視であるとか、なにかそういう超絶的な理由があるわけではない。これはなぜかと言えば、“他人ごとフィールド”が人間の生まれ持った性癖を上手く利用しているからだ。つまり、見たくないもの、そこにあるはずのないもの、説明のつかないものは見えないという性癖である。
 スラーティバートファーストの船の場合がまさにそうだった。ピンクではなかったが、かりにピンクだったとしても問題にならないぐらい、この船には視覚的難点がどっさりあった。というわけで、人々はこの船を徹頭徹尾見ないことにしていたのである。
『宇宙クリケット大戦争』より

 奇想天外な科学技術も『銀河シリーズ』の醍醐味だ。この乾電池一個で100年も動く、脅威のステルス技術“他人ごとフィールド”もそのひとつ。ぼんやりしている主人公アーサーだけが普通に船が見えているくだりも面白い。

 そう言って指し示した椅子は、ステゴザウルスの助骨でできているのかと思うような椅子だった。
「それはステゴザウルスの助骨でできておるのだよ」老人が言った。
『銀河ヒッチハイクガイド』より

 くだらないですねえ〜。

 まだまだ書き写したい文章が山のようにあるので、続きは次回で。興味が湧いたら是非読んでみてね!おすすめは偉大すぎる一作目を除くと、『さようなら、魚をくれてありがとう』かな!

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