海外の固有名詞のカタカナ表記
画像はグーグルマップの北欧の一部で主にデンマークとスウェーデンが写っています。
インドネシアという国名が正しいとしよう。インドネシアはローマ字入力でその英文表記indonesiaの通り入力して変換すると正しいカタカナが出て来る数少ない国である。cもkも同様に扱ってくれるみたいなのでアメリカもカナダもそうではあるが、他にはあまり無いと思う。トルコとロシアに挟まれた国ジョージアは以前日本ではグルジアと表記されていた。英国のロックバンド ビートルズの作品にBack in the USSRという曲がある。USSRとはソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)の英文表記の略号であり、この曲の歌詞は
「マイアミビーチ(米国フロリダ州)からBOAC(ブリティッシュ航空の前身)に乗って・・・・・・ソ連に戻ってきた」
というソ連人と思しき人の視点によるものだが、途中の歌詞はこんな具合である。
「ウクライナの女には負けるよ。西欧なんて目じゃないね。モスクワの女といると歌ったり叫んだりしたくなるよ。でも僕の心の中にはいつもジョージアの子がいる」
はて、何で急に米国ジョージア州の女が出て来るんだ?こいつはソ連人なのか米国人なのか?ソ連人が米国から帰国したのではなく、以前ソ連を訪れた事のある米国人が再びソ連を訪れたということか???と思ったものだが、ジョージアがその頃日本でグルジアと呼ばれていたソ連の一部だった共和国を指していたのなら何の不思議もない歌詞である。
ロシアによる侵攻後キーウと表記を変えたウクライナの首都は以前はキエフだった。ロシアの作曲家ムソルグスキーの作品に“展覧会の絵”という組曲があり、その終曲が”キエフの大門“であった(この終曲の一部は”ナニコレ珍百景“というテレビ番組で珍しい光景が登場する際に使われている)が、今どういう表記なのだろうか。Wikipediaでは”キエフ(キーウ)の大門“となっていた。
ジョージアもキーウもロシア語風の発音に基づくカタカナ表記は嫌だという現地人などの要望で変更されたと理解しているが、そもそも最初にカタカナを当てはめた人々の苦労が偲ばれるというか、正直言って「誰もわかりゃあせんだろ」と割り切らないととてもできない作業だと思う。固有名詞でなくて一般名詞だってソックスとサッカーに対応する英単語は語源が同じで母音の発音も同じなのにソとサに分かれてしまったくらいだ。
さて本稿の地図の右上の方はスカンジナビア半島南端近くのスウェーデンであり、上の方にリンシェーピングという都市がある(ここの女子サッカーチームに一時期日本の籾木結花や宝田沙織が所属していた)が、似た綴りでデンマークの西端にある都市はリンケビングである。kにoもどきの母音が付いたのを同じ北欧でもシェとかケとか違った発音をするのである。コペンハーゲンのほぼ真北にあるスウェーデンのイェ―テボリはそのアルファベットと簡単には結び付かないだろう。私と仕事で関わりがあった英語圏の知人はここのことを「ゴッテンブルグ」と発音していた。ここのサッカーチーム(特記なき限り男子)が1970年に来日して日本代表の強化試合の相手となったが、当時はヨテボリと表記されたと記憶している。スウェーデン人で「ベリ」で終わる人が英語圏では「バーグ」となる事はよくある。かつてのテニスの名選手エドベリがエドバーグ、サッカーのサンドベリがサンドバーグといった具合に。
さて、サッカー選手である。十分国際化が進んだと思われる今の日本でも固有名詞のカタカナ表記はやはり苦手だ。遠藤航と共にリバプールの強力な中盤を構成するアルゼンチン選手はマックアリスターと書かれたりマカリステルと書かれたりする。フランスの大エースはエムバペなのかムバッペなのか。エムバペはかつてガンバ大阪で活躍したカメルーンのエムボマからの類推のように思われるが、だからといってエムバペが誤りとも言い切れない。ポルトガルの大エースはロナウドなのかロナルドなのか。これはポルトガル語特有の悩みのようであり、他にブラジル人名の末尾がトスタオかトスタンか、ファルカオかファルカンかという悩みもある。1974年W杯で活躍した西ドイツのゲームメーカーはオフェラーツともオベラーツとも書かれたが、オベラートが多かったと思う。同じ頃活躍したポーランドのシャルマッハは最初の頃スザルマッハと書かれていたし、オランダのクライフはその数年前のサッカーマガジンに確かクリュッフと載っていた。クライフらが所属したオランダのアヤックスは昔はアジャックスだった。1966年W杯でポルトガルを3位に導いた“黒豹”エウゼビオは最初オイセビオだった。Euで始まる名前を多少ドイツ語の分かる人が勝手にオイにしてしまったのだろう。
そんなわけで、私のサッカーに関する記事には不審な名前が出てくるかもしれない事を予めお断りしておく。
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