法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準_会計基準_会計処理_当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等
【本日のインプット】
5. 当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等(注)について
は、次を除き、法令に従い算定した額(税務上の欠損金の繰戻しにより還
付を請求する法人税額及び地方法人税額を含む。)を損益に計上する。
(1) 企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引のうち、損益に反
映されないものに対して課される当事業年度の所得に対する法人税、
住民税及び事業税等
(2) 資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額等(企業会計基準第5
号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」第8項に定め
る評価・換算差額等に区分されるものをいう。以下「評価差額等」と
いう。)に対して課される当事業年度の所得に対する法人税、住民税
及び事業税等
(注) 「所得等に対する法人税、住民税及び事業税等」には、所得に対する
法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)のほかに、住民税
(均等割)及び事業税(付加価値割及び資本割)を含むものとする。
5-2. 前項(1)及び(2)の当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税
等については、次の区分に計上する。
(1) 前項(1)の当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等につ
いては、純資産の部の株主資本の区分に計上する。具体的には、当該
法人税、住民税及び事業税等を株主資本の対応する内訳項目から控除
する。
(2) 前項(2)の当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等につ
いては、個別財務諸表上、純資産の部の評価・換算差額等の区分に計
上し、連結財務諸表上、その他の包括利益で認識した上で純資産の部
のその他の包括利益累計額の区分に計上する。具体的には、当該法人
税、住民税及び事業税等を、個別財務諸表上は評価・換算差額等の対
応する内訳項目から控除し、連結財務諸表上はその他の包括利益の対
応する内訳項目から控除する。
5-3. 前2項の定めにかかわらず、次のいずれかの場合には、該当する法人
税、住民税及び事業税等を損益に計上することができる。
(1) 第5項(1)又は(2)の法人税、住民税及び事業税等の金額に重要性が乏し
い場合
(2) 課税の対象となった取引や事象(以下「取引等」という。)が、損益
に加えて、第5-2項(1)又は(2)の区分に関連しており、かつ、第5項(1)又
は(2)の法人税、住民税及び事業税等の金額を算定することが困難であ
る場合
5-4. 第5-2項に従って計上する法人税、住民税及び事業税等については、課
税の対象となった取引等について、株主資本、評価・換算差額等又は
その他の包括利益に計上した額に、課税の対象となる企業の対象期間
における法定実効税率を乗じて算定する。この場合、第5項に従って
損益に計上する法人税、住民税及び事業税等の額は、法令に従い算定
した額から、法定実効税率に基づいて算定した株主資本、評価・換算
差額等又はその他の包括利益に計上する法人税、住民税及び事業税等
の額を控除した額となる。
ただし、課税所得が生じていないことなどから法令に従い算定した
額がゼロとなる場合に第5-2項に従って計上する法人税、住民税及び
事業税等についてもゼロとするなど、他の合理的な計算方法により算
定することができる。
5-5. 第5-2項(2)に従って計上した法人税、住民税及び事業税等については、
過年度に計上された資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額等を
損益に計上した時点で、これに対応する税額を損益に計上する。
【本日のアウトプット】
5. 当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等(注)について
は、次を除き、( ① )を( ② )に計上する。
(1) 企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引のうち、(
➂ )ものに対して課される当事業年度の所得に対する法人税、
住民税及び事業税等
(2) 資産又は負債の( ④ )により生じた評価差額等(企業会計基
準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」第8項に
定める評価・換算差額等に区分されるものをいう。以下「評価差額
等」という。)に対して課される当事業年度の所得に対する法人税、
住民税及び事業税等
(注) 「所得等に対する法人税、住民税及び事業税等」には、所得に対する
法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)のほかに、住民税
(均等割)及び事業税(付加価値割及び資本割)を含むものとする。
5-2. 前項(1)及び(2)の当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税
等については、次の区分に計上する。
(1) 前項(1)の当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等につ
いては、純資産の部の株主資本の区分に計上する。具体的には、当該
法人税、住民税及び事業税等を( ⑤ )する。
(2) 前項(2)の当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等につ
いては、個別財務諸表上、純資産の部の( ⑥ )の区分に計
上し、連結財務諸表上、( ⑦ )で認識した上で純資産の部
の( ⑧ )の区分に計上する。具体的には、当該法人
税、住民税及び事業税等を、個別財務諸表上は評価・換算差額等の対
応する内訳項目から控除し、連結財務諸表上はその他の包括利益の対
応する内訳項目から控除する。
5-3. 前2項の定めにかかわらず、次のいずれかの場合には、該当する法人
税、住民税及び事業税等を( ⑨ )に計上することができる。
(1) 第5項(1)又は(2)の法人税、住民税及び事業税等の金額に重要性が乏し
い場合
(2) 課税の対象となった取引や事象(以下「取引等」という。)が、損益
に加えて、第5-2項(1)又は(2)の区分に関連しており、かつ、第5項(1)又
は(2)の法人税、住民税及び事業税等の金額を算定することが困難であ
る場合
5-4. 第5-2項に従って計上する法人税、住民税及び事業税等については、課
税の対象となった取引等について、株主資本、評価・換算差額等又は
その他の包括利益に計上した額に、課税の対象となる企業の(
⑩ )における( ⑪ )を乗じて算定する。この場合、第5
項に従って損益に計上する法人税、住民税及び事業税等の額は、法令
に従い算定した額から、法定実効税率に基づいて算定した株主資本、
評価・換算差額等又はその他の包括利益に計上する法人税、住民税及
び事業税等の額を控除した額となる。
ただし、課税所得が生じていないことなどから法令に従い算定した
額がゼロとなる場合に第5-2項に従って計上する法人税、住民税及び
事業税等についてもゼロとするなど、他の合理的な計算方法により算
定することができる。
5-5. 第5-2項(2)に従って計上した法人税、住民税及び事業税等については、
過年度に計上された資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額等を
( ⑫ )時点で、これに対応する税額を損益に計上する。
解答↓
【解答】
① 法令に従い算定した額(税務上の欠損金の繰戻しにより還付を請求する法人税額及び地方法人税額を含む。)
② 損益
➂ 損益に反映されない
④ 評価替え
⑤ 株主資本の対応する内訳項目から控除
⑥ 評価・換算差額等
⑦ その他の包括利益
⑧ その他の包括利益累計額
⑨ 損益
⑩ 対象期間
⑪ 法定実効税率
⑫ 損益に計上した
【関連基準】
結論の背景
会計処理
当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等
29. 監査保証実務指針第63号では、法人税、住民税及び事業税について、表
示に関する取扱いは、「法人税、住民税及び利益に関連する金額を課税
標準として課される事業税は、「法人税、住民税及び事業税」として損
益計算書の税引前当期純利益金額又は税引前当期純損失金額の次に記載
する。」と記載されていたが、会計処理に関する取扱いは記載されてい
なかった。
このため、2017年会計基準では、当事業年度の所得等に対する法人
税、住民税及び事業税等についての会計処理に関する取扱いとして、法
令に従い算定した額を損益に計上することを明示することとした(第5
項参照)。
29-2. 2022年改正会計基準の審議においては、前項における所得に対する
法人税、住民税及び事業税等の計上区分に関して、次の2つの考え方に
ついて検討を行った。
(1) 当該法人税、住民税及び事業税等を、その発生源泉となる取引等の
処理と整合させ、所得を課税標準とする税金については、損益、株主
資本及びその他の包括利益の各区分に計上する考え方
(2) 法人税、住民税及び事業税等の支払は、税金の発生源泉となる取引
等の処理にかかわらず、課税当局(国又は地方公共団体)への納付で
あるため、当該法人税、住民税及び事業税等は損益に計上する考え方
この点、国際的な会計基準においては、所得を課税標準として課され
る税金(法人所得税)については、(1)の考え方のように、税金が純損益
の外で認識される項目に関するものである場合には、その他の包括利益
及び資本項目に配分することとされている。また、企業会計基準適用指
針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「税効果適用
指針」という。)においては、(1)の考え方と同様に、税効果額は、税効
果会計が適用される取引等が計上される区分(損益、株主資本又はその
他の包括利益)と同一の区分で計上する取扱いとしている。
29-3. 前項(1)の考え方を採用した場合、税引前当期純利益と所得に対する法
人税、住民税及び事業税等の間の税負担の対応関係が図られ、税引前当
期純利益と税金費用から算定される税負担率を基礎として将来の当期純
利益を予測することが可能となるため、将来の業績予測に資する情報が
提供され得ると考えられる。また、当事業年度の所得に対する法人税、
住民税及び事業税等の計上区分が、税効果会計における税効果額の計上
区分と整合することとなるとともに、国際的な会計基準における処理と
の整合性を図ることができると考えられる。
そのため、2022年改正会計基準では、当事業年度の所得に対する法人
税、住民税及び事業税等を、損益、株主資本及びその他の包括利益に区
分して計上することとした(第5項及び第5-2項参照)。
29-4. なお、2022年改正会計基準では、前項に基づいて、株主資本に対して
課される当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を純資
産の部の株主資本の区分に計上する取扱いを定めている(本会計基準第
5項(1)及び第5-2項(1)参照)が、このような場合として、例えば次のよう
なものが考えられる。
(1) 子会社等が保有する親会社株式等を企業集団外部の第三者に売却し
た場合の連結財務諸表における法人税等に関する取扱い(企業会計基
準適用指針第2号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基
準の適用指針」第16項)
(2) 子会社等が保有する親会社株式等を当該親会社等に売却した場合の
連結財務諸表における法人税等に関する取扱い(税効果適用指針第40
項)
(3) 子会社に対する投資の一部売却後も親会社と子会社の支配関係が継
続している場合における親会社の持分変動による差額に対応する法人
税等相当額についての売却時の取扱い(税効果適用指針第28項)
(重要性が乏しい場合の取扱い)
29-5. 2022年改正会計基準の審議の過程では、当事業年度の所得に対する法
人税、住民税及び事業税等を、損益、株主資本及びその他の包括利益に
区分して計上する取扱い(第5項及び第5-2項参照)を一律に求める場
合、コストが便益に見合わないこともあるとの意見が聞かれた。これを
踏まえて、損益に計上されない当事業年度の所得に対する法人税、住民
税及び事業税等の金額に重要性が乏しい場合には、当該法人税、住民税
及び事業税等を当期の損益に計上することができることとした(第5-3
項(1)参照)。
(複数の区分に関連することにより、株主資本又はその他の包括利益に計上する金額を算定することが困難な場合の取扱い)
29-6. 2022年改正会計基準の審議の過程では、退職給付に関して、例えば、
確定給付制度を採用している場合に、確定給付企業年金に係る規約に基
づいて支出した掛金等の額が、税務上、支出の時点で損金の額に算入さ
れる点について、会計上、掛金等の額は退職給付に係る負債の減額とし
て扱われ、当該退職給付に係る負債は連結財務諸表上、その他の包括利
益として計上した未認識数理計算上の差異等を含むことから、その他の
包括利益に対して課税されていることになるか否かについて検討を行っ
た。
この点、掛金等の額は確定給付企業年金制度等に基づいて計算されて
いるが、当該計算と会計上の退職給付計算は、その方法や基礎が異なる
ことから、掛金等の額を数理計算上の差異等と紐づけることは困難であ
り、掛金等の額に数理計算上の差異等に対応する部分が含まれるか否か
は一概には決定できず、また、そのような金額の算定は困難であると考
えられる。
また、仮に、何らかの仮定に基づいて金額の算定を行うこととした場
合、そのような仮定に基づいて会計処理された情報の有用性は限定的で
あると考えられる。
そこで、退職給付に関しては、当事業年度の所得に対する法人税、住
民税及び事業税等を、損益、株主資本及びその他の包括利益に区分して
計上する取扱いに対する例外を定めることとして検討を行った。
29-7. 前項の例外を定めるにあたり、退職給付に関する論点以外に、同様の
論点が生じる状況は限定的であると考えられるが、今後、株主資本やそ
の他の包括利益を用いた会計処理を定めた場合や、税法が改正された場
合に、同様に株主資本又はその他の包括利益に対して課税されている部
分を算定することが困難な状況が生じる可能性がある。
そのため、例外的な定めとして、課税の対象となった取引等が、損益
に加えて、株主資本又はその他の包括利益に関連しており、かつ、株主
資本又はその他の包括利益に対して課された法人税、住民税及び事業税
等の金額を算定することが困難である場合には、当該税額を損益に計上
することができることとした(本会計基準第5-3項(2)参照)。当該例外
的な定めを選択するか否かは、企業会計基準第24号第4項(1)に定める
「会計方針」の選択に該当すると考えられる。
なお、当該定めに該当する取引として、2022年改正会計基準の開発時
点においては、退職給付に関する取引を想定している。
(株主資本又はその他の包括利益に計上する金額の算定に関する取扱い)
29-8. 当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、損益、株
主資本及びその他の包括利益に区分して計上する取扱いに関して、各区
分に計上する金額をどのように算定するかが論点となる。
この点、従来から、子会社に対する投資を一部売却した後も親会社と
子会社の支配関係が継続している場合において、親会社の持分変動によ
る差額として計上される資本剰余金から控除する法人税等相当額は、売
却元の課税所得や税金の納付額にかかわらず、原則として、親会社の持
分変動による差額に法定実効税率を乗じて計算することとしており(税
効果適用指針第28項)、また、当該取扱いは、税金の納付が生じていな
い場合に資本剰余金から控除する額をゼロとするなど他の合理的な計算
方法によることを妨げるものではないとしている(税効果適用指針第
118項)。
このような子会社に対する投資の一部売却に関する取扱いは、税務上
の繰越欠損金がある場合など複雑な計算を伴う場合があることから、実
務に配慮しつつ、個々の状況に応じて適切な判断がなされることを意図
したものであると考えられる。子会社に対する投資の一部売却以外の株
主資本又はその他の包括利益に対して課税される場合についても、同様
に実務上の配慮が必要になると考えられることなどから、当事業年度の
所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、株主資本又はその他の包
括利益に区分して計上する場合についても同様に取り扱うこととした
(本会計基準第5-4項参照)。
(その他の包括利益の組替調整(リサイクリング)に関する取扱い)
29-9. 当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、損益、株
主資本及びその他の包括利益に区分して計上する場合、法人税、住民税
及び事業税等がその他の包括利益累計額(又は評価・換算差額等)に計
上されることがある。この場合、その他の包括利益累計額に計上された
法人税、住民税及び事業税等を組替調整(リサイクリング)するか否か
が論点となる。
この点、これまで我が国においては、当期純利益の総合的な業績指標
としての有用性の観点から、その他の包括利益に計上された項目につい
ては、当期純利益にリサイクリングすることを会計基準に係る基本的な
考え方としていることを踏まえ、当該法人税、住民税及び事業税等が課
される原因となる取引等が損益に計上された時点で、対応する税額につ
いてもリサイクリングを行い、損益に計上することとした(第5-5項参
照)。
29-10. 当該リサイクリングに関連し、当事業年度の所得に対する法人税、
住民税及び事業税等をその他の包括利益累計額(又は評価・換算差額
等)に計上した後、リサイクリングがなされるまでに税法の改正に伴
い法人税、住民税及び事業税等の税率が変更される場合において、税
率の変更に係る差額をリサイクリングすべきか否かについて、税効果
会計における税率の変更に関する取扱いとの整合性の観点から論点と
なった。
この点、税率が変更された場合、税効果会計においては繰延税金資
産及び繰延税金負債の再計算に伴い資産及び負債が変動するのに対し
て、その他の包括利益累計額に計上された過年度の所得に対する法人
税、住民税及び事業税等については、関連する資産又は負債である未
収還付法人税等又は未払法人税等は通常は税率変更の時点では確定し
た税額として還付又は納付済みであると考えられ、資産及び負債の変
動はない。したがって、税法の改正に伴い税率が変更される場合であ
っても、税法の改正時に税率の変更に係る差額をリサイクリングする
必然性はないものと考えられる。
ここで、税率の変更に係る差額をリサイクリングする処理は、過年
度に計上された資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額等を損
益に計上した時点における税引前当期純利益と税金費用の比率を法定
実効税率に近似させることを重視する観点からは考え得る処理であ
る。
しかし、税引前当期純利益と税金費用の比率は必ずしも法定実効税
率とは一致せず、両者の差異の主要な要因を注記により開示している
こと、及び当該処理は実務上煩雑であるとの意見が聞かれたことを踏
まえ、税率の変更に係る差額をリサイクリングする処理は採用せず、
過年度に計上された資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額等
を損益に計上した時点のみにおいて、リサイクリングを求めることと
した(第5-5項参照)。
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