「なじみ」だけど、馴染みたくはないの
コンビニのレジで店員さんに「あ、今日は納豆巻きじゃないんですね」と声を掛けられたら、次回からそのコンビニは使えない。
わたしはそういう人間です。
以前noteに書いたカット専門店についての、まさかの続編です。
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こちらのお店の美容師さんは、お1人だけ。
1人だから指名いらず。予約=指名です。
美容院ではなくカット専門店なので、シャンプーもカラーもパーマもありません。
受付を終えたら、即カット。
到着時間からお会計終了までの所要時間は30分未満という素晴らしいスピード感です。
順調に裏を返し、今回で3度目の来店ですから、わたしは最早「なじみ」。
なじみともなれば受付で名乗らずとも、先方が顔を覚えていて挨拶だけでカット台に行けたりするかしら。
と思った矢先。
受付で開口一番
「ご予約のお客様ですか?」
と尋ねられました。
…
いい。
この、なれ合わない感じ。
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そもそも、わたしが美容院を苦手としているのは、こちらが心を許していないのに、ずかずかと心の壁を越えて上がり込んでくる美容師さんが多い為です。
担当の方が静かだからと言って気は抜けません。
カットしてくれる人
シャンプーしてくれる人
手伝いに入る人
お会計をしてくれる人
の内、誰か1人は社交性を売りにした土足系が必ず紛れ込んでいるからです。
だって、美容業界では積極的なのが是とされていますものね。
美容学校では、よく知らない人への当たり障りない話し掛け方の授業があるし、美容院のマニュアルには「施術中はとにかく雑談をしましょう」って書いてあるもの。
毎日、朝礼で唱和してるもの。
(※想像です。)
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そんなこんなで、安心と実績のカット専門店受付にて、のべ3回目の名乗りを上げ席につき「今日はどうなさいますか?」と聞かれたわたしは、美穂さんのとっておきの写真を先方にお見せしました。
「阿佐ヶ谷姉妹の、美穂さんみたいにしてください。この、向かって左の方です。」
「あー…
結構短いので、髪が結わけなくなりますが問題ないですか?」
…
さすがです!
元々、「えっ阿佐ヶ谷姉妹すか?笑」とかのリアクションを返してくることはないだろうという安心感はありました。
でも、まさか「まとめ髪が出来なくなるがよいか」という実質的な質問が飛んでくるとは。
信頼度だだ上がり。
その後も、美容師さんは黙々とわたしの髪を切り、時々「前髪はどうしますか?」などの確認必須事項を尋ねてくるのみ。
わたしはその間1人、無言でニマニマしていました(怖い)。
だって、完璧過ぎる。
わたしは長年、こういう場所を求めていたのです。
10回だって20回だって通って、毎回「ご予約のお客様ですか?」と尋ねられたい。
華麗な手さばきで美穂さんカットを施してもらったわたしは、颯爽とお店をあとにしました。