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【読録】15分都市 カルロス・モレノ

著者のカルロス・モレノは、コロンビア生まれのフランスの学者で、都市計画や持続可能な開発の専門家です。本のタイトルの通り「15分都市」コンセプトの提唱者として知られています。彼の研究は、都市生活の質向上や環境負荷削減を目的とし、国際的にも有名な人物です。

モレノの提唱する15分都市とは、中心が1箇所に固まらず、多数の中心を持ち、1つの施設が多数の機能を果たし、基本的なサービスを提供す施設が住民移動15分圏内にある街のことを言います。
具体的には、職場や学校、商業施設、医療施設、文化・スポーツ施設などへ徒歩や自転車で15分以内に到達できるように配置するということです。

モレノは、車中心の都市設計が交通渋滞や大気汚染を引き起こすだけでなく、人々が近隣の地域やコミュニティと関わる機会を減少させ、街の活気や社会的つながりを損なうと指摘しています。
「15分都市」のビジョンでは、車への過度な依存を減らし、人々が徒歩や自転車、公共交通機関で移動できる環境を整えることで、都市の中心部や居住エリアがより人間的で魅力的な空間になることを目指しています。このアプローチにより、住民が地域の多様性や文化を享受しやすくなり、都市全体の魅力を高めることが期待されています。

実際に、フランスのパリでは、市長のアンヌ・イダルゴが政策として15分都市の概念を採用し、❶自転車インフラの拡充、❷歩行者優先エリアの増加、❸公共スペースの再構築、❹学校の周辺環境の改善(車両通行規制など)を行い、住民の満足度を向上させたとして評価を受けているそうです。

確かに、例えば、自宅から自転車15分圏内に職場があり、食品や用品が購入でき、役所や図書館で公共サービスを受けることができたら理想ですよね。
何よりも通勤時間に往復2時間以上かけている私としては、その時間を家族と過ごす時間や、もっと生産性の高い行動に充てることができたら、今よりも良い暮らしであると実感できると思います。

ちなみに、自転車で15分移動できる範囲はというと、
自転車の平均速度を時速15km(約4.2m/s)とすると、15分間で移動できる距離は、

  1. 自転車の平均速度(m/s): 15km/h ÷ 3.6 = 4.2m/s

  2. 時間(秒): 15分 × 60秒 = 900秒

  3. 距離 = 速度 × 時間 = 4.2m/s × 900秒 = 3,780m

したがって、半径約3.8kmの範囲が自転車で15分間移動できる距離の目安になります。
そして、半径約3.8kmを面積で表すと、約44.9平方キロメートルになります。
結構広い。
我が藤沢市の面積が約70平方キロメートルですから、自転車15分圏✖️2でカバーできてしまいます。
そう考えると、「中心」がものすごい密度で必要というわけではなさそうですね。
ただ、徒歩15分圏に設定すると、ちょっと非現実的のような気もします。(モレノは郊外では30分圏域を提唱しています。)

モレノは、脱炭素という観点からも車社会からの転換を訴えており、また、デジタル化の進展がより15分都市の実現可能性を高めたと言っています。
そして、都市とは何か?を考えた時に「変化し続けることこそ都市の本質」としています。
まさに現代は社会の変化が激しく、それらが圧力となって都市の変化が一層求められているのかもしれませんね。
そして、この変化を受容していく都市とそうではない都市に大きな差が現れるのに、そう長い時間がかからないのかもしれません。

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