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わかった わかった 何がわかつた

今は昔、山あいを流れるT川の上流は流れが速く、下流へ行くに従って豊富な水量となってゆっくりと流れていく。3つの県をまたぎ海にそそいでいるのでかなりの長さである。
地元地域の人々には親しみもあり、いろんな関わりをもつT川は生活に密着した特別な存在である。
5つダムがあるくらいだからまあ大きい。
途中の街道 には飲食店をはじめ店舗が数軒ある。上流には繁華な市街があり人も多いところがあるが、中流ではそれほど多くない。よって店舖も少ない。店を構えるならある種それなりの工夫努力が必要だ。ある時たまたまなのか工夫と言えるかどうか分からないが、おもしろいものを見た。
下流から上流に昇るように車で走行していた。距離が長く時間がかかるので時には休憩も必要となる。昼時の時間帯ならなおさら食事処として店を探すことになる。
川を左に、山あいが続く中を北上して行くと、みなれた風景がしばらく続く。走って行くと流れる川に沿って道が続くのでおのずとカーブが続く。途中右カーブ があり走行して行くと何か書いてある。よく見ると新しくできた店の宣伝のようだ。
名前はたつかわ と看板に書いてある。食事処たつかわ、たつかわ食堂、日本料理いろいろ書いてある。走るにしたがって看板が増えている。経費節減の為か手書きのようだ。何もない山の中なのでめだっている。にぎやかなのは大変結構だが、あまり続くとくどい、くどすぎる。
たつかわ たつかわって、いい加減もうわかったよ と思っていると、こちらの気持を見透かしたかのように

わかつた

と書いてある。

なんだこれはと思ったが、ギャグでもなんでもなくいたってまじめに書いただけのことだとわかった。
その訳は はじめの頃は左から右に流れてたつかわと読んでいた。縦の文字もそのままたつかわと読んでいた。
その内ある場所では進行方向に向かって右から左に読むように書かれていることが分かった。なんのことはない。
それが

わかつた

わかった

と早とちりの勘違いをしただけのことだと分かった。

間違いと

○○ガイ

はどこにでもある。


しかしあのたつかわは
もうない。
看板もない。


思い出にだけのみある。


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