空港よもやま話 あれこれ
現代はAIを始めとする先端技術のおかげで便利になったことが多い。駅の改札の乗り降り等、渋滞もある程度緩和されて通過できるようになり、充分恩恵を被り大変結構なことである。
一方人口集中と過疎化などにより問題は多岐にわたり複雑化してきている。便利な反面、アナログにたいする郷愁もいなめない。
以前社員旅行で海外に行き帰りの国内の空港で改札を通る際、会社の仲間と順番に並んで待っていた。ちょうど私の前が上司で何か言われている。聞くと
(変な本やテープを持ち込んではないか?)
と言われている。私はそれを聞いてなんてことをいうのか、上司はそんな人間ではない。そんな類いの連中とは似ても似つかない清廉な人なのだ。実際言われた上司はそんなのあるわけないと半ば呆れ気味に言っていた。私は思わず係官を仕事とはいえ人を疑ぐるなんて因果な商売だと思わずさげすんで侮蔑の思いを込めて見入ってしまった。
そうこうする内に私の順番となった。すると ろくに話しかけもせず、詳しく見もせず、あっさりと、はい次っとばかりに手で行って良いしぐさをするのだ。拍子抜けしてしまった。どんな追求がくるのか戦々恐々と待っていたのに、驚いたことにスムーズもいいとこで何ら問題なく通過した。
その時私は思わずある考えをするに至った。それは担当の係官は一度に大勢の人を把握することは難しい。それで並んでいる人の今まさに通る寸前の心理状態を読んでピンポイントで目を光らせているのだ。それで私の前にいる上司に悪態をつき私の反応、心理状態を見ていたのだ。私がソワソワしていれば怪しい。あんなこと言われて自分だったらどうしようみたいな、しかし私は何てことを言うのだと不快感を示す事によって、やましくないとされる反応をしたと判断されセーフとなったのではないか。おおむね正しいと考える。
そこまで至るに何故私がと思えなくもないが、よほど悪そうに見えたのか、目立つ存在だったのかは知る由もない。
それにしても蛇蝎視のごとく忌嫌っていた私に対してあっさり通した係官にヒューマニズムを感じた。彼も人間なのである。嫌われたくないのか職務に忠実なあまり度が過ぎたと判断したのか分からないが、すんなり通してくれた係官が良い人に思えてきた。できれば人に嫌われたくはないが性善説だけではものごと成り立たない職業なのだ。誤解されかねないが彼がそういう行動に出たのも致し方ないと自分を戒めた。大変重要な役目なので頑張って欲しいとエールを送った次第だ。
別の時に同じように皆で待っていてひとりだけ呼び出された事がある。さあエロビデオか大麻かと暇を持て余してはやし立てる輩もいて騒々しかった。当の本人は皆目見当もつかず何かの間違いではないかといぶかって出ていった。するとカバンの中身をチェックする際、赤外線で写す為ウイスキーの瓶が写っていた。割れてカバンの中身が濡れてしまうかもしれないので、手持ちカバンに移し替えるように言われた。たいしたことでなくホッとするやら嬉しいやらで安心した。
因みに大金を払い土産品のマカダミアナッツを改造して、違法ビデオを忍ばせ、涼しい顔してまんまと税関をすんなり通った後輩の猛者もいた。あぶない橋を渡ってまでしてよくやると思うがそれがオタクのオタクたる所以なのだ。マニアックなオタクはそれを嗜好する。あの頃まだそれは珍重されたものだった。
嬉しそうに持ち帰りしたのを覚えている。
人それぞれの人生である。
人それぞれの生き方がある。
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